友達作りは計画的に
「あんたはバカか!
武器持ったって私が岡ちゃんに勝てるわけないでしょ
フッフッフッ
岡ちゃんが拒否れない必殺技で勝負!」
「必殺技? 何?
超こわ…ぃ………」
岡崎が言い終わる前に斉藤は岡崎の頭を自身の方に寄せるように引き付けるとそのまま頭を抱き締められて岡崎は言葉を失って固まった
『なっ……さ、斉藤さん……いきなり何を……』
決して大きくはない斉藤の胸だが、少しムニュッとした弾力の感触が顔に当たっているのがわかり岡崎は真っ赤になりながら心臓がバクバクしていた
「カズ君、1試合くらい出てよ……カッコ良く勝つ所が見たいな」
「ぁう……ちょっ…………っえ…ぇ……な…なん………」
「ね? カズ君……お願い……」
まさか斉藤にされるとは思ってなかった岡崎は驚きと、彼女がしてくれた事の嬉しさでついつい追い打ちで言われた拍子に何も考えずに「うん」と答えとしまった
すると斉藤は胸を擦り付けるようにグリグリと動かしながら大笑いした
「ア~ハッハッハッハッ
このスケベ~ッ!
やっぱり一瞬で落ちたじゃん
最終兵器最強~っ!
ダハハハハッ」
「いや、だ、だ、だって……斉藤さんにこんなんされたら拒否れないって……」
「ヒャ~ッヒャッヒャッヒャッ
WINNER~!
超単純~っ でも本当に私は見てみたいから絶対出てよ?」
そう言って彼女は再び両肩に手を置いて岡崎を見つめ「約束だからね」と言ってニコッとされると岡崎に拒否する選択肢はなくなってしまう
「はぁぁぁぁ……超嵌められた……
校内試合だからどうせお遊びみたいな感じだと思うよ
それに今さら俺が出れるかどうかもわからないし……まぁ『出れるなら』って感じだよ?」
「OK~っ!」
「て言うか……この距離だとマジで緊張するから……
キスされるのかと思った……」
「アハハハハッ
岡ちゃんの方が下ネタしか考えてないし~っ
超ムッツリ岡ちゃん!」
「いや、あの場面だと暴力以外だとそれしか思い付かなくない?」
「何言ってるの?
あんた自分で理想語っておいてよくあの場面で忘れてそんな事言えるね
せっかくやってあげたんだからそれくらい気付きなよね~っ
バカ丸出し」
「あっ そう言う事か……急にあんな近くに顔があるからドキドキしすぎて頭が真っ白になってた……
だ、だからそれされたら断れないからやるようになっちゃうって言ったじゃん……」
「岡ちゃんを扱う超鉄板の武器を手に入れた~っ
私に逆らったら教室でやるからね!」
「学校ではマジでやめて……最悪な人に最悪の武器渡した気分……」
「アハハハハッ
ヒドイなぁ~っ
じゃあさ、2連勝したらキスしたげるよ」
「えっ!?本当に?
て言うか本当は何試合あるか知ってるんでしょ?」
「エヘヘ バレてた?
5試合あるって聞いてるよ」
二、三年生の合同チームA
二、三年生の合同チームB
二年生選抜
三年生選抜
団体戦レギュラー組
の合計5試合が予定されているらしく、一年生は毎年この校内試合で高校生との力差を実感して最初の挫折を味わうのだと説明されたらしい
「それは俺個人が勝てばいいって事でしょ?」
「自信満々みたいな言い方だね~」
「自信はないけど……ちなみにだけど、それ以上勝ったら何かある?」
散々サボっているので今の状態ではレギュラー候補の重量級の先輩には勝てる気はしないけど、それ以外の先輩になら勝てないかもしれないが負けない自信はあったので、ひょっとしたらご飯を奢ってくれたり休みの日にデートしてもらえたりなどご褒美的な条件が出てくるかもと期待していて、条件次第では本当に出れるのなら真剣にやってみようとも思っていたので聞いてみると、斉藤もムキになって強気に返答を返してきた
「うわっ 出た……
まぁレギュラーに勝つのは100%無理だから、4勝したら岡ちゃんの言う事を何でも聞いてあげるよ」
「何でも?
キス以上も?」
「………………何急にやる気出してんの!
スケベッ!
下心しかないじゃん
まぁ絶対ムリだろうけど4勝したらエッチでもセフレでも何でもしたいならしてあげるよ
その代わり2勝出来なかったら夏休みまで私の奴隷ね」
「ちょっと待って!
夏休みまで?
俺だけ超リスクがありすぎでしょ?」
「負けたってたった数ヶ月なんだからいいじゃん」
「罰の格差が激し過ぎ……」
「アハハハハッ
それは仕方なくない?
だって私はエッチしてもいいって言ってるんだよ?
上手かったらセフレに昇格させてあげるし」
「……それって単に斉藤さんが欲求不満だからでしょ」
「ブハッ アハハハハッ
超失礼な~っ!
何かムカつくから今からホテルに拉致って岡ちゃんのがチンコが立たなくてなるまでやってやろうか!」
「ハハハッ
毎回だけど、よくそんな事言えるね~
しかもこの辺ホテルないし
お持ち帰りしてくれるなら喜んでついていくっす!」
「あ~っ ついに本性出た!
岡ちゃんに嵌められて(エッチで)ハメられちゃう
キャハハハハッ」
「人聞き悪い事言うな」
しばらくは彼女からのこじつけのような言い掛かりでのこんなやり取りを繰り返しながらも再びお店探しを再開して歩いていると、まだ日が落ちるのが早いこの時期なので辺りは真っ暗になっていて駅に向かって歩いていた
「はあ~っ 笑った笑った~っ
やっぱり岡ちゃん面白い人だよね
今日は超楽しかったよ
月曜日の二人へのお土産で新しく見つけたお店のクッキーも買ったし、また二人で探検しようね
今度は違う駅にしてもいいかもね」
「まぁいいんだけど……また今日みたいなヒヤヒヤさせられるのはヤダよ」
「あれはわざとだから!
岡ちゃんが私との約束を忘れてたからちょっとした嫌がらせをしただけ~
今度はちゃんと岡ちゃんが自分から申告するならもうあんな事はしないって
今度はどこかの駅で待ち合わせにしてもいいしね」
「マジで焦ったんだから……
俺の休みは基本的に自分のさじ加減だから、どっちかと言えば斉藤さんの都合がいい日を教えてもらえば合わせられるよ」
「ほいよ~っ
とりあえず部活紹介の日までの平日は一応練習に出るからその後にしようか?
あっ じゃあさ、部活紹介の日程がわかったら決めようよ」
最初は緊張しまくっていた岡崎だったが、斉藤が全く気取る事もなく下ネタやバカな話なども散々してきたので岡崎も徐々に話に乗って二人でゲラゲラ笑っていたので帰る頃にはすっかり緊張も溶けていた
「それはいいんだけどさ、俺と二人ででも大丈夫だった?
口下手だから斉藤さんを楽しませてるってより、斉藤さんが俺をイジッて勝手に楽しんでただけのような……」
「え~っ 全然口下手じゃないって!
普通に超楽しかったよ!
会話してても岡ちゃんって結構話も面白いし、それに聞き上手だしさ~ コミュ力はかなり高いよ
ナッチーやツバサには敵わないけど私も結構お喋りな方だけど一方通行じゃなくて全然問題なく会話が成立してたじゃん」
斉藤は岡崎以外にも数人の男子と二人で遊んだらしいのだが、男子が空回りして彼女が冷めてしまったり、男子があまり話さなかったり男子もよく喋る人だったらお互いに言いたい事を言って会話が成立しなかったりなど、彼女からしたら不満足な人ばかりだったらしくずっと消化不良で帰っていたらしく、思い出しながら考えるような顔で言った
「こういう言葉のキャッチボールが最後まで成立して、最後まで楽しくいられたのって岡ちゃんくらいだよ
丁度いい感じにツッコミ入れたり話せば最後まで聞いてからまともに答えてくれるしさ、意外と私、岡ちゃんに興味持ったかも」
「それはマジで嬉しいんだけど……彼氏持ちの人に言われると素直に喜べない複雑な気分」
「アハハハハッ
じゃあ彼氏と別れて付き合おうか?」
「アハハ それもどうかと……
斉藤さんと俺だと釣り合わないしな~」
「そこ?
いやいやいや、むしろ私よりギャルギャルした子の方が岡ちゃんと釣り合わないからね!
絶対遊ばれてるか財布代わりに使われてるって見られると思うよ」
「だ、だよね……何回か家でイメージした時に薄々それは俺も思ってたんだよ……」
「超ウケる~っ
どんな妄想してたのさ?
でも岡ちゃんがギャル彼女作って歩く姿も見てみたい気もするからやっぱり付き合うのは辞めよ~っ」
「どっちにしても面白がってるだけじゃん……
何かなぁ~っ 反撃の意味で久しぶりに本気で試合して4勝してやろうかな?
絶対言う事聞いてもらうからね」
「勝てる気でいるし……ニンジンぶら下げたら凄い力発揮しそ~っ
ちなみになんだけど、正直な話で5試合全部に出たら何勝出来そうな感じ?」
「それは相手によるよね……
ぁぁ……でもな~ ここで何か言ったらまた変な条件に変えそうだもんな」
「変えないって!
約束は約束で本当に勝ったら何でもするから正直な所、どんな感じなの?」
彼女は柔道もそうだがプロレスや格闘技を見るのが好きらしく、そんな事を知らない他のクラスの柔道部員から岡崎の話を聞いたのでかなり興味を持ってしまって試合をしている所が本当に見たくなっているのだと言った
「だからね、あの重量級揃いのうちの柔道部の中だと細い部類の岡ちゃんだから勝てないとは思うけど……一応予想は聞いてみようかと……」
「どうだろうね……たぶんレギュラー組との試合に俺は出ないだろうから、出ても最初の3試合だろうから2勝1引分……か、3勝……かな?」
「何その自信……
優香里のクラスの山中なんて重量級のくせして1勝出来るかどうかって言ってたけど……
でも岡ちゃんて山中より強いんでしょ?
全っ然この岡ちゃんがあのデカイ山中より強いなんて想像出来ないんだけど」
「どうなんだろね?
リップサービスってやつじゃない?」
「岡ちゃんてさ、優しくて穏やかなんだけど何か余裕持ってて堂々としてるから本当に正体不明で謎が多すぎる」
「謎が多いって……別に俺に興味ある人なんていないから聞かれてないから答えてないだけで……
自分からペラペラ語ったらバカ丸出しじゃん
それに夏の大会も出てないから斉藤さんみたいに人に言えるような結果もないから」
「だから高校で結果を作ればいいじゃ~ん
そのまま完全復帰したら意外と県大会で3位くらいならいけるんじゃない?」
「アハハハハッ
危なっ……危うく『そうだね』って言いそうになった……
まだ見ぬ彼女が本気で言ってきた時以外の復帰はしないから、それにたぶん復帰した所で真面目にやってきた人には勝てないから一回戦勝つのがやっとって所じゃない?」
斉藤は『友達の試合を応援する』程度の気軽な感じでいるのでこれ以上ハードルを上げたら自分が大変になるので敢えてこれ以上の事は何も言わずに終わろうとした
「でもさ、あの二人が知ったらやたら無茶ブリしてきそうだから学校ではこの話はしないでね」
「アハハハハッ
はいよ~っ
じゃあまた来週ね
バイバイ~っ」
話ながら駅構内の路線の分かれ道までくると斉藤は笑いながらご機嫌に帰って行った