友達作りは計画的に

そして何だかんだとありつつもいよいよ斉藤の部活紹介演技の日になった



「由美の演技を早く見たいわ~」


「何かこういうのって試合より恥ずかしい気がする……」



いつもの三人組が岡崎の横で話していると「岡ちゃんも来るの?」と斉藤が聞いてきた


「当たり前じゃん
カメラまで持って来ましたから!」


「アハハハハッ
超ヤバい人~っ」

「岡ちゃん絶対変な目線でしか見てないでしょ!
由美、オカズにされちゃうよ」



富田とナッチーはゲラゲラ笑っていたが斉藤は冷たい視線で岡崎を見ると「変な写真撮るなよ」と言って笑った


「別に汚れても焼き増しすればいいから大丈夫」


「ちょっとあんたバカじゃないの!
何を堂々とオカズにする宣言してんのよ
キモい マジで来るな!」


「アハハハハッ
ウソウソ、このカメラあと10枚残ってるから使っちゃいたいんだよ」


すると「え~っ じゃあうちらも撮ってよ」と、ナッチーが言い出してカメラを奪い取ると勝手に三人で自撮りしていると富田が「せっかく岡ちゃんのカメラだから三人とそれぞれツーショットを撮らせてあげるよ」と言って何故か岡崎と三人がそれぞれツーショット写真を撮る事になった


この三人は可愛いので正直嬉しい気持ちではあるが、悪のりした言い出しっぺの富田は岡崎が座る足の上に座ってきて軽く抱きつくように体を密着させて笑顔でピースをした


「アハハハハッ
早く撮って~っ
岡ちゃん超赤くなってる~」


「ちょ……と、富田さん……」


岡崎は真っ赤になりひきつった顔になると周りも爆笑しながら見ていてそのまま写真を撮られてしまった


斉藤は岡崎の後ろに来ておぶさるようにくっついてきて写真を撮られ、ナッチーは富田のように岡崎の足の上に座ると「ツバサより密着しちゃお~っ」と言ってお互いの頬っぺたをくっつけて元気にピースをした



「ほらぁ うちらと写真撮れて嬉しいでしょ?」


ナッチーは岡崎に座ったまま言ってきて、こんな間近でギャルに言われると返答に困ってしまい、頭を掻きながら「ぅぅ~っ まぁ……」と全く頭が回らずにただただ緊張していた



結局それを見ていた女子達も撮ってほしいと言い出して数人の集合写真を三枚撮りカメラを返された



岡崎がカメラを持ってきたのがわかれば彼女達は勝手に写真を撮るだろうと思って出したので、クラスの女子の写真が手に入る事で満足していたが一応「勝手に……」と少し怒ったようなふりをして終わった



そのまま授業も終わるとナッチーと富田に「岡ちゃん、早く行かないといい場所なくなるよ」と急いで三人で向かい、斉藤から聞いた一番彼女が見やすい位置を確保した



「何か友達の演技見るってドキドキするね」



待っていると本当に体育館の観覧席が満員になりドアの向こう側まで立ち見で入れない人までいた


「て言うか男子率高くね?
入部希望案内ってより単なる野次馬男ばっかり」

「だよね
マジでエロ目線しかないじゃん」



二人が周りを見ながらブツブツ言っているが、よく見ると富田を狙って写真を撮っている男子も数人見かけたがとばっちりを食らうのはわかりきっているので岡崎は知らないふりをしていたのだが、ナッチーは斜め前の方にいるカメラを向けていた男子を見つけると怪訝な表情で富田を見た


「ねぇ あれ絶対ツバサを撮ってない?」

「うわ キモッ
こういうコソコソされるのが一番嫌い」



人も増えて移動も出来ないので諦めたように愚痴っていたが、ナッチーとこれから斉藤の演技が見れる事を話していると機嫌も直ってき始めたので彼女に質問をした




「富田さんて、もし写真撮らせてって言われたら素直にOKするの?」


「う~ん……人による……
まぁ基本的には断る」


「アハハハハッ
だよね ツバサが素直にOKするわけないし~っ
ツーショットなんて超レアだよね」


「当ったり前でしょ~っ
だって友達以外と写真を撮る意味ないもん
岡ちゃんは友達一号だから特別だし」



二人の会話から、どうやら岡崎は本当に富田の認識の中では友達と思ってくれているようで少し優越感はあったが、彼女が悪のりすると後から男子に色々言われるのが面倒なのもあり複雑な気分ではあった



しかし二人ともよく喋り明るいので彼女達の会話を聞いていると待ち時間もあっという間に過ぎて、顧問とキャプテンが登場した


演技前に部活紹介などをマイクで話始めると、期待の高まってザワザワしていた体育館も静かになりみんな聞いていて説明なども終わるといよいよ演技が開始された


最初は試合で行われる演技が始まると友達なども名前を呼んだりして試合にはない和やかな雰囲気の中進行されていた


「ぁぁ……何か惜しい演技……」


岡崎からしたらしなやかで綺麗な演技だったがナッチーはあら探しのようなダメ出しを小声で何度か言っていたが岡崎も富田も聞こえないふりをして楽しんでいると先輩達の演技も終わり一年生の順番になり中央に並んだ



「由美~っ
こっち向いて~」

「由美~っ 可愛いよ~っ
頑張って~っ」
  

富田とナッチーの声に斉藤もニヤッとしてこちらを見ていて『うるさい』と口を動かしたのを見て二人はまたゲラゲラと笑っていた


  
新入生の紹介も始まり、特待生の中学での成績を紹介されると斉藤など三人が全国大会で個人や団体戦で入賞していて、紹介されるたびにどよめいていたが、彼女達以外にも他県から来た子なども全国大会経験者が多数いて、今年は例年以上に良いメンバーが揃っていると紹介された



斉藤は団体演技にも出たが、それが終わると個人ソロを行い魅了していた


普段見せない真剣な表情や演技に岡崎は見入っていて写真を撮る事も忘れていた


「やっぱり新体操は綺麗だね」

「だよね~っ
由美とか全国で上位の人は動きが違うよね」


最後に試合ではやらない音楽にのせたダンスっぽい踊りを部員全員で行い、会場中が手拍子をしながら友達に向かっ声をかけたり歓声をあげたりしていて全く新体操要素はなくなっていたが大盛り上がりしていた



途中で部員達は散り散りになりそれぞれの友達の方に近づいて踊り始め、やはり斉藤はこちらにきて笑顔で踊りながら「写真は?」と言われて岡崎は慌ててカメラを構えると彼女はカメラに向かってポーズを撮りながら笑いながら踊っていた



大盛り上がりの中、全プログラムが終わると挨拶があり解散になった



県内屈指の名門校なので新入生の女子がすぐに仮入部申し込みや問い合わせで殺到していて、斉藤も一年生なのでその対応をしないといけないので岡崎は富田とナッチーの二人と先に帰る事になったが、最前列で見ていたので出口が混み合っているのを待っていると顧問の先生がナッチーを呼んで少し離れ、何かを話してから戻ってきた


「どうしたの?」


「ううん 別に……ちょっとね……」


いつになく歯切れの悪い返答でいつもと違う彼女の反応にきっと何かやらかしたんだろうと思い、彼女は人を巻き込む癖があるので巻き添えは面倒なのであまりツッコんで話を拡げない方がいいと判断し「ふ~ん」と興味なさそうに返事をして外に出た



「さて、由美の演技も見れたしあとはGW終わったら岡ちゃんの出番だね」

「そうだよ
ちゃんと練習してる?」


「いやぁ……まぁ一応はやってるよ」


「何そのやる気のない返事~」



帰りの電車で話しているとナッチーが言った


「そう言えば2勝したら由美とご飯でしょ?
じゃあさ、3勝したら私とデートってご褒美にしたらやる気出るでしょ?」


「また思い付きで適当な……て言うか、よく自分からご褒美が『私』なんて言えるね
どこにそんな自信持ってるんだ?」


「え~っ いいじゃん
4勝したらデート代を私が全部出してあげるよ」


「マジで?
それなら話は変わるわ」


「アハハハハッ
超即効で食いついた
マジでいいよ
その代わりて出来なかったら夏休みまで奴隷ね」


「うわっ やっぱ裏があるんかいっ
やめとこうかな
リスクの方が大きい」


「ダメだって!
もう決まったからキャンセルはなしだよ」


「まだ返事してないじゃん」


「え~っ 何言ってるか聞こえな~い
ツバサもやるって聞いたよね」


「うん 聞いた~
デートが嫌なら仕方ないけど……ナッチー泣いちゃうかも~っ」


「いや……ナッチーは楽しいから嫌なわけないけど……
何て断りにくい言い方すんの……
罰ゲームが増えるとマジでキツイって……」


「勝てばいいだけでしょ!
じゃあ私は全勝したらデートしてあげるよ
まぁ全勝はほぼ無理だから3勝したら罰ゲームはなしにしてあげる
ナッチーも3勝にしてあげなよ……どうせ3勝に下げてもムリだろうから三人の奴隷は決定だよ」


「じゃあ……
2勝したら由美とデート
3勝したら罰ゲームはなし、できなかったら三人の奴隷
4勝したら私とデート、5勝したらツバサとデート……
これならどう?」


富田とのデートは本気で嬉しいご褒美だからやる気にはなるが出来なかった場合の罰ゲームが彼女達の性格からして本当にこき使われそうで怖いので岡崎は本気で練習する事に決めた


「絶対だよ?
それならいいよ
絶対に3勝したら罰ゲームはやらないからね」


富田は資格の試験が8月にあるので、もし全勝してもデートは夏休み以降になるのを了解してリスキーな賭けが成立した






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