友達作りは計画的に

一年生の下駄箱前にはクラスと出席番号順に名前が貼り出されていて、それを新入生達が合格発表のように自分の名前を探しながら同じ中学同士らしき友達とキャッキャと騒ぎながら楽しそうに見ている横で岡崎は一人で淡々と名簿で自分の名前を探していた



『う~んと……あったあった
D組だ
同じ中学から来た人は誰もクラスに名前がないし全員違うクラスか』



同じ中学から来た数名は会えば普通に話すがそれほど仲がいい訳でもないのでクラスが分かれたと言っても特に気になる事もなく、靴をしまい見慣れない人ばかりがキャッキャキャッキャとしている騒がしい廊下を歩くと中学ではなかったギャル達のいい匂いが漂っていた



『この子達、可愛いし超いい匂いする
まだ何もないけどこの高校にして良かったかも』


ニタニタして変な人だと思われるといけないので崩れそうな表情を堪えながら教室へ行くと、教室内でもまだ馴れない者同士のぎこちない会話がそこかしこで行われていた



こういう空気って苦手なんだよな……

そんな空気感に若干冷めてしまいながらも甲高い声でゲラゲラ笑っている女子達に目がいくと一気に気持ちが盛り上がってきた



『うぉ~ パッと見でもメッチャ可愛い子がいっぱいいる~っ!
女子の半分くらいは伊東さんレベルで伊東さんが普通の人に感じるくらいだ……
しかもバカっぽい子から綺麗なお姉さんタイプまで色んなタイプのギャルがいっぱいいる~
ここはギャルの園か!?
でもこの子達が俺なんかと仲良くしてくれるかな?』



期待してここまで来たが、実際のクラスメイトの女子達を見ると噂通りに可愛い子率が異常に高くて岡崎は逆に不安感も出てきてしまった



岡崎の中学は公立だったのだが土地柄か市内でもダントツの真面目学校で、比較的田舎寄りだった事もありギャルと言ってもヤンキー崩れみたいな微妙なギャルが全校でも2、3人しかおらず、自分が髪の毛を染めたりチャラい格好をするつもりは全くないが一般的なギャルに対しての憧れの気持ちもありギャルの友達や彼女を作る事が高校での一番の目標でもあったのでこの光景はまさに天国のように見えた



『お姉さんタイプのギャルはクールで冷めてそうだから、やっぱり明るくて元気で可愛い系のギャルと仲良くなりたいけどバカっぽい子は勘弁だな
そうだ!
それよりも一番重要な最初の隣の席の子はどんな子かな?』



教室の後ろのドア付近から見回してニヤニヤとしかけたが無表情になり浮かれていない感じを装いつつ期待でドキドキしながら出席番号順の自分の席を見た


岡崎の隣の席には横を向いていて顔はわからないが、頬杖をついて気だるそうにしながら座り、肩下まである綺麗なミルクティーブロンドの金髪で後ろ姿だけでも明らかなギャルが座っていた

岡崎の嫌いな気だるい系の冷めたギャルの予感はしたが、そうでない事を祈りながら彼女の横の席に着くと彼女は頬杖のままパッと顔だけ岡崎の方を向くと一瞬『おっ』という顔をしてから頬杖をやめて椅子に普通に座るとニコッとして笑顔になった



「おっはよっ!
お隣さん?
仲良くしてね~っ」



『うわっ 超明るくてフレンドリーそうな子
てか、超派手なギャルメイク……
……ん~ でも結構感じのいい話し方だしバカそうじゃない明るい子っぽいけど、いきなりここまでのギャルと話す想定は出来てなかったからどうしよ……』




いきなりの派手めなギャルに緊張して固まりそうになってしまうが、とりあえず挨拶はしとかないといけないと思って口を開いた


「ぁ……ぉ…おはよう
よろしく……」



そう言うと彼女は明るく人懐っこそうな笑顔でニコニコして岡崎を直視してきた

岡崎も思わず少し表情が緩みドキドキしていると彼女は微笑みながらさらに話しかけてきた



「私、鬼頭菜月~
名前は何君?」


「ん……ぁ……俺は、おきゃ……岡崎一成」


緊張を隠そうとはしていたが言葉が少ししどろもどろになって噛んでしまうと彼女が笑いだした


「アハハハハッ
いきなり噛んでるし~
どうした?緊張してるぅ?
もしかして女子慣れしてない人?
お隣さんなんだし気楽に話そうよ
私は『ナッチー』って呼んでくれたらいいよ
岡崎カズナリ君だから……岡ちゃんでいい?」


「ぇ……ぁ……うん……お好きにどうぞ」



中学までは小さい頃から同じ地域だったので話した事がないにしても小学校から見かけた事のある人ばかりで、広いくくりで言えば知り合いだから初めて話すにしてもある程度どんな人かわかっていたから良いのだが、全くの初対面でしかも教室に入って数秒後にいきなり派手メイクギャルに話掛けられた岡崎は戸惑うも、彼女もついさっき登校したばかりでクラスに知り合いがいないので誰に話しかけようなか?と思っていた所に岡崎が来たので捕まえたと話してきたので、こんなギャルにも少し親近感を覚え安心をすると彼女はちょっと小声になり含み笑いをしながら言った



「私、普段メッチャ喋るんだけどさ、最初だから変な子と仲良くなると学校生活がつまらなくなりそうだからちょっと慎重に見てたんだよね~
お隣の岡ちゃんはいい人そうで良かった
仲良くしようね!」



「ハハッ 何かそんな感じする」


こんな子でもそういうのは気にするんだ?と、感心していると彼女の口調も普通に戻り語りだした


「ホント、私って思い付きで喋っちゃうから変な事を言ったら真に受けないで適当に流してくれていいからね
それでさ、岡ちゃんてガタイいいけど柔道とか空手とかラグビーとか何かしてるの?」


「柔道やってるよ」



初めて話すギャルに怒涛のトークをされた岡崎は呆気に取られながらも、ギャルは好き嫌いが激しく一回壁ができると全く喋ってももらえないし冷たく接しられるという不確かな情報もあったので、一人目からそんな事態になってはマズイと思って一応愛想笑いを作りながらポツリと返事を返すのがやっとだったが、とりあえず会話はしようと努めて返事を返していた

  

「体はそんな感じだけど話し方や顔が優しい感じだし、何か可愛いらしい感じだからギャップだね
ねぇねぇねぇ
筋肉ギュッてやってみてよ」


彼女は腕を曲げて力こぶを作るポーズをしたので岡崎がやると、全く人見知りもなく以前からの友達のように何の躊躇いも抵抗もなく彼女は腕を触ってきた


「おぉ~ いいねいいね~
ちょっとポッチャリしてるからそんなに筋肉ないかと思ってたけどカチカチだ
顔も悪くないしダイエットしたら結構いい感じになるんじゃない?」


「そ、そうかな?
まぁ中学で部活を引退してからかなり太ったから一応ダイエットはしようかと思ってはいるんだけどね」


「アハハハハッ
何か超いっぱい食べそうだもん
うん でもダイエットした方が絶対いいよ!
頑張れ~っ
キャハハハハッ」



彼女は全く人見知りしない明るい性格のようで、少し苦手だと思っていた派手なギャルメイクだがケラケラと明るく笑いながら喋りかける彼女に不思議と嫌な印象はなく、岡崎もいつの間にか自然と彼女を受け入れていた


ナッチーのペースで話していると岡崎の緊張もいつの間にか溶けてきて、周りの席にきたクラスメイトにも彼女は気軽に話しかけながら岡崎にも話を振ったりしてくるので変に気負う事なく第一関門の席の近いクラスメイトとは難なく打ち解けて話ができていた
< 3 / 18 >

この作品をシェア

pagetop