友達作りは計画的に
帰りは部活だったのでそのまま何事もなく週末を挟んで翌週登校すると岡崎の席に富田が座ってナッチーと話していた
彼女は本当に初登校日より不機嫌丸出しの顔で足を組んだまま椅子の背もたれにのけ反るように腰掛けながら気だるそうに話していて、その様はまるで女王様が偉そうに語っているようだった
富田は岡崎を見つけると「はぁぁ……おはよ……」とため息をついてから睨むような目で挨拶をしてきた
「ぉ……おはようございます」
「何そのよそよそしい言い方」
「……本当にガラ悪い……ヤンキーに絡まれてる気分」
すると富田は頭をかきながら「ちょっと頭を出してみて」と言うので少し会釈するように頭を下げるといきなりパチンッと叩いてきて無言で少しジッと見てから口元が笑った
「フフッ 八つ当たり……
ぁぁ……メッチャ生理痛ダルいよぉ」
本当にダルくて腰が痛い事を訴えるような表情が色っぽく見えて岡崎はつい少しニヤリとしかけたが直前で堪えて困り顔を作っていた
「フッ……イヤイヤイヤ……ど、どうしたらいいの……
マジで絡みにくいんだけど……」
「だから生理中は近寄らない方がいいって言ったでしょ」
「何て自己チューな……ここ俺の席だから」
「チッ……口ごたえばっかりだなぁ……フフフフフッ なんてね
岡ちゃんなら怒らないような気がしたからちょっと八つ当たりしてみた
マジで八つ当たりしないとやってられないくらい超腰痛いんだって……」
「怒りはしないけど……大丈夫?
とりあえず生理終わるまではナッチーを連れて向こうの富田さんの席に行ってください」
「あっ ムカつく~っ
嫌っ 絶対嫌!
明日も朝からここにいて絡んでやるから!
ナッチー、あんたまで追い出されてるよ」
「ツバサはいいけど何で私まで追い出すのさ
授業中にまた絡むぞ!
それが嫌だったらお昼に甘いデザート買ってきな!
特にプリン」
「あんたら二人はタチの悪いヤンキーか!
何をパシらせようとしてんの」
「アハハハハッ
……ぅぅ……笑っても響く……私はゼリーね」
「どさくさ紛れに何をリクエストしてんの!
買わないから」
しかし、腰をさする富田は辛そうにしていたので「大丈夫?」と声をかけると、痛そうな顔をしながらも「まぁ大丈夫ではないけど……ありがと……こんな感じだから不機嫌な時はそう思って変に絡んでも許してね」と微笑んだ
少しそのまま話していると授業前にナプキンを変えとくと言って二人はトイレに行った
その姿を見て中学でもそういう女子がいたな……と思い出しながら座ると彼女のお尻の温もりが伝わり『うわっ 富田さんの温もり……』と、思春期の高校生の岡崎は少しドキドキして興奮していた
お昼になり岡崎はいつも誰かに誘われれば一緒に食べているのたが、基本的に決まった人達と食べるのもつまらないし学校の敷地内ならどこで食べても良いので、学食や部室など色々な場所で食べている人の所に行っては毎回違う人達と食べていた
その日は学食でクラスの男子数人と食べていて、前に女子が生理期間は甘い物が食べたいと話しているのを聞いていたので、学食のデザートコーナーにあるプリンを2つとゼリーを買った
「岡ちゃん3つも食うの?」
「いや、ナッチーと富田さんがヤンキー並みに絡んできて買ってこいって言うから」
「アハハッ
優しいな
俺なら絶対『自分で行け』って言うぞ」
「まぁ生理痛でガラ悪いから無駄に絡まれても面倒だしさ」
「あ~っ 朝から頭殴られてたもんな
富田って超美人だけど怖いから何か絡みにくいな……
岡ちゃんに羨ましさ半分そうでないの半分な感じ」
彼らはこの後は体育館に行くと言っていたので岡崎はプリンとゼリーを持って教室に戻るとやはり廊下には富田を見ようと他のクラスから人が数人見に来ている横を通り抜け教室内に入ると、二人は席を動かずに気だるそうな富田とゲラゲラ笑っているナッチーの机にプリンとゼリーを置いた
「ほい」
「えっ 本当に買ってきてくれた?」
「さすがに苦しんでそうだから……」
「超嬉しいんだけど~っ
ありがと
いただきま~す」
富田はさっぱりした甘さが欲しかったようで、この後本当にゼリーか何かを自分で買いに行こうか迷っていたらしいが動くのが嫌だから半分諦めていたらしい
「あぁぁ~っ このツルッとさっぱりした感じいいよね」
「私は生理に砂糖舐めてもいいくらいドロドロした甘さが欲しくなるよ」
「ナッチーほとんど新種の昆虫じゃん」
岡崎がツッコむと富田はブッと岡崎の机にゼリーを少し吹き出した
「あっ ごめん
汚しちゃった
くくっ アハハハハッ
でも新種の昆虫って~っ
岡ちゃんのツッコミのワードって何かチョイス絶妙でがツボる
本当にナッチーがそう見えてきた」
と、笑いながら富田がティッシュで拭いているとナッチーは笑いながらも食べ終わったプリンの入れ物を岡崎の机に入れて睨んだ
「机の中をゴミ箱にしてやる
今度から鼻かんだらこっそり入れとくから」
「何だその小学生レベルの嫌がらせは」
ナッチーは笑いながらもわざとらしく拗ねた顔を作りそっぽを向くと、それを見ていた女子が「岡ちゃんがナッチーのスプーン舐めて喜んじゃうよ~」と言って笑うと「嫌~っ岡ちゃん超変態じゃん」とナッチーと富田が言って笑いだした
「ここにいると俺がどんどんヤバい奴になっていく……
せっかくおごってあげようと思ったけどナッチーは奢らない」
「嫌ぁ……岡ちゃん大好き
ほらっ スプーン舐めていいから奢ってぇ
何なら私がもう一回ペロッてするから」
「アハハハハッ
全っ然反省してないやん
て言うかプリンごときで何でそこまで出来るんだよ
マジで舐めてやろっかな?」
「ヤバい この人、超変態の目してる~
本当にやりそうだからゴミ回収します」
周りが爆笑する中、岡崎は表面的には笑っていたが中学でも比較的大人しく過ごしていたのでツッコミキャラでもイジられキャラでもなかったのだが、この二人といるとツッコミ所が満載すぎてついついツッコんでしまったりこうやって陥れられてしまい、なぜか周りのギャルからもイジられたりしてしまっていた
楽しいのだがどちらのキャラも今までした事のない事なので違和感や戸惑いがあった
「あ~笑った笑った……
何かちょっと気分が和らいだかも~
この隙に替えてこよ
岡ちゃん、ご馳走さま
ありがとね
今度何か奢ってあげるよ」
そう言って富田はゆっくり歩きながら一人で教室を出るとナッチーは小声で話しかけてきた
「岡ちゃんてツバサの事が好き?」
「見た目は可愛いけど……好きとまでは……
何で?」
「だってこんなの買ってきてあげて」
「富田さんと言うよりも最初に言い出したのはナッチーだからね!
好きだからと言うよりも、目の前であんなにツラそうにされたらねぇ……
別にこの程度だし~って感じじゃない?
男にはわからない痛みだからよけいに心配になるからね」
「ふ~ん……岡ちゃんは超優しい人だね」と嫌味のような納得しきっていない返事をする彼女に小声で言った
「それに富田さんもナッチーも数少ない仲良くしてくれる女子の友達だし……
その二人だから他の人よりはちょっとは気になるでしょ」
「アハハッ
そっか じゃあ岡ちゃんが風邪ひいたらギュウゥ~ってして温めてあげるよ」
「フハハハハッ
ぜひお願いします」
ノリだけで言うナッチーの発言はたまに可愛いと思えて笑ってしまう事もあるが本気にはできないので軽く合わせて流して返事をしいて、富田もトイレから戻ってきて話しているとお昼も終わった