気怠いお隣さんと恋始めます!
第1章
お隣りのイチさん
「…小夏。それ、うまいの?」
私がちぅーと吸っているはちみつ黒酢ドリンクのパックを横目で眺めながら、僅かに顔をしかめて聞くイチさん。
「うまいですけど」
「…ふーん」
「…飲みます?」
そっとイチさんに飲んでいたはちみつ黒酢ドリンクを差し出してみる。
「…いらない」
「えっ、興味ないなら聞かないでもらっていいですか」
ふ、息の漏れる音が空気を震わせて、イチさんが笑ったんだと分かる。
それに釣られて私の顔もつい綻ぶ。
見てるだけで酸っぱい。そう言ってイチさんは私の鼻を摘んで、電子タバコの煙をふぅーと吐き出す。
感情の起伏をあまり見せない、いつも飄々としている彼は、例えば何かに心を動かされたり、何かに胸を焦がしたり。そういうことがあるのだろうか。
でも、笑うと少しだけ緩く上がる口角だとか、意にそぐわない時すっと細くなる目だとか、「小夏」と呼ぶその声が心なしか出会った頃よりも少し柔らかいことだとか。
私がちぅーと吸っているはちみつ黒酢ドリンクのパックを横目で眺めながら、僅かに顔をしかめて聞くイチさん。
「うまいですけど」
「…ふーん」
「…飲みます?」
そっとイチさんに飲んでいたはちみつ黒酢ドリンクを差し出してみる。
「…いらない」
「えっ、興味ないなら聞かないでもらっていいですか」
ふ、息の漏れる音が空気を震わせて、イチさんが笑ったんだと分かる。
それに釣られて私の顔もつい綻ぶ。
見てるだけで酸っぱい。そう言ってイチさんは私の鼻を摘んで、電子タバコの煙をふぅーと吐き出す。
感情の起伏をあまり見せない、いつも飄々としている彼は、例えば何かに心を動かされたり、何かに胸を焦がしたり。そういうことがあるのだろうか。
でも、笑うと少しだけ緩く上がる口角だとか、意にそぐわない時すっと細くなる目だとか、「小夏」と呼ぶその声が心なしか出会った頃よりも少し柔らかいことだとか。
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