気怠いお隣さんと恋始めます!
いや、充分無茶苦茶です…
そう思いながらおにぎりに齧り付く。

「…まあ、それは冗談にしても」

「全然冗談ぽく聞こえなかったけど…?」

「そろそろクリスマスだし?ちょっと頑張ってみてもいいんじゃないかと思ったわけ。ベランダの君に彼女出来たら、ベランダ越しでさえも会えなくなるかもしれないんだよ?」 

「…ん」

それは、私も危惧していたことだ。私たちの関係はとても脆い。
ほぼ毎日ベランダ越しに他愛のない話をするだけのただのお隣さん、という私の立ち位置はあまりに弱くて脆い。
イチさんに彼女が出来てしまったら、そんな関係はあっという間に絶たれてしまうだろう。

「…イチさんに彼女が出来たら、イヤだなぁ」

思わず本音が溜息と共に溢れた。

その呟きを聞いた真帆が、

「…なら頑張れ」

優しく目を細めてそう言うから、ちょっと、ほんのちょっとだけ勇気を出して頑張ってみようかな、そう思ったのはここだけの話。
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