気怠いお隣さんと恋始めます!
声は震えていなかっただろうか。
泣きそうになって、慌ててばいばい、と陽平に背を向けて走り出した私は、上手く笑えていただろうか。

最近なかなか会えなかったのは、仕事が忙しいせいだけじゃなかったのかもしれない。

食事中、いつもお日様みたいな笑顔が少し曇っていることには薄々気付いていた。
何かを言いかけて、でも言い出せないでいることも…

だから、縋り付くことも出来なかった。

私と陽平で積み重ねてきた5年間の最後は、実に呆気ないものだった。

自嘲気味に笑い、目から溢れ出る涙を拭うことなく冷たい冬の空気に晒しながら、そこまで距離のない家までの道を、がむしゃらに走った。

満月が、どこまでも追いかけて来ていたーー。
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