気怠いお隣さんと恋始めます!
家に帰ると、陽平と一緒に選んだお気に入りのソファーだとか、その上に鎮座する、UFOキャッチャーで取ってもらったクマの縫いぐるみだとか、キッチンのカゴに並んでいるお揃いのマグカップだとか、そこかしこに5年分の陽平の面影が溢れていて、それを視界に入れたら同時に陽平のお日様みたいな笑顔も浮かんで来て、余計に涙が溢れた。

そんな面影を振り切るようにベランダに飛び出し、綺麗な満月に向かって、声を押し殺して泣いた。
外の寒さも、陽平の温もりを失ってしん、と冷えて凍てついた心に比べたら全然寒くは感じなかった。

どのくらい泣いただろう。

「…使う?」

ふと横から箱ティッシュが差し出された。

「……⁉︎」

反射的に箱ティッシュを差し出してくれた人物に顔を向ける。
すると、いつもの、何の感情も読み取れない瞳と目が合った。
はっと我に返る。

「…すっすみません!うるさかったですよね⁉︎こんなベランダで…!すぐ部屋に…」

戻ります、と言おうとして遮られた。
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