ワーホリで本当の恋を見つけてしまいました。
彼は上村晴臣(かみむらはるおみ)32歳独身と名乗った。近くのホテルに2年駐在しているとのこと。

「私は松永未来、27歳です。少し前まで東京で病院に勤めていました。」

「ワーホリって言ってたね。いいね、若くて。俺はもうワーホリができない年齢になっちゃったよ。」
と笑って言ってた。

「年齢はありますよね…それに男性は仕事を途中で辞めて、となるとなかなか出来なくなりますよね。だからか日本人は男性でワーホリの子はみんな若いですね。海外は結構年齢がまちまちだけど。」

「そうだな。俺も大学の頃は旅行行ったりしてたけどワーホリまでは出来なかったな。」

「私もまさかワーホリするとは思ってなかったです。」

「でもやってる。凄いじゃないか。君はまだ若いんだからなんでもできるよ。」

「私にも色々ありまして、それで東京から逃げて来たっていう方が正しいんです。」 

「そうだったか。すまない。」

「謝らないでください。私、ここに来れて本当に良かったと思ってるんです。ここに来て私はやっと笑えるようになったと思ったんです。」

「そうか。確かに…ここにいると気持ちがゆったりするよな。ニュージーランドの人はみんなおおらかだ。それに高い建物もなく空が広いよな。」

「そうですね!本当に空が広い。この前スカイダイビングをしてさらにそう思いました!それに世界はどこまでも繋がっている、なんたる当たり前のことだけどすごく心に響いてきたんです。」

「なかなかアクティブだな。世界は繋がっている、かぁ…。空は東京まで繋がっているんだもんな。」

「そうですね。東京まで繋がってますね。世界中どこにいても帰りたいとなったら24時間あれば大抵帰れますから。そう思ったら気楽になってここまで来れました。」

「24時間あれば帰れる、か。君は凄いな。」

「凄くないんです。小心者だから心が疲れ果てて逃げ出したんです。でもやっぱり小心者なので踏ん切りがつかなくて…。そんな時にガイドブック見てたらクライストチャーチまで24時間もかからないじゃない。と思ったんです。ヨーロッパだってかかりません。秘境まで行っちゃうとそうはいかないけど本気で帰りたければいつだって帰れる、と思えてきて日本を飛び出しちゃいました。」

「24時間か。そんなこと考えなかったな。こっちにて2年。なんだか日本は遠く感じて出られなかったんだ。だから一度も帰ってないんだ。」

「一度も?」

「そう。一度も。」

「寂しくないですか?」

「寂しくないと言ったらウソになるな。でも遠いからすぐに帰れないらと思ってた。いや、思い込んでた。君みたいな考えを1週間前に知っていたらこんな後悔はしないで済んだんだろうな…。」
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