終わらない夢 II
神社に向かえば、なにかが分かる。そんな気がしてならなかった。男の子ふたり、女の子ひとり。後者はもう会ってる。
とにかく動かなきゃ落ち着かなかった。ぜんぶを思い出した訳ではないかもしれない。でも、忘れたくないみんなのことを忘れてしまっていた。このことだけでも一歩進んだんだ。
「優奈ちゃん!」
「……ヲル」
「そんなに慌ててどうしたの?」
「あなたは……瑠夏ちゃん、でしょ」


「びっくりしたよ。いきなり慌てて来て、私の名前を言うんだもん」
「落ち着いてられなくて」
ヲルを見たとき、このひととどこかで会った気がしたのは間違いじゃなかった。
確実ではないけれど。
「思い出したの?」
「名前と、少しだけ。でも、進歩したよ」
「うんうん…最初はどうなることかと思ったよ」
「どういうこと?」
「優奈ちゃんがこっちに来てから、予想はしてたけど、何も覚えてないって。どうしようかって悩んでたんだ」
そんなことが…
「ごめんね、私のせいで…」
「ううん。こうして覚えてくれてるから大丈夫」
夢で見た笑顔と一緒だ。嘘偽りのない笑顔。
「…咲也と翔は?」
「……そのことなんだけど」


つまり、ふたりはどうやら私が元いた夢の世界に留まっているらしい。咲也はひとつ目の世界、翔はふたつ目の世界に。
「戻って来たときには、私しかいなくて」
「なら、早く連れ出さなきゃ」
「待って!」
突然の大きな声は、あたりにけっこう響いていた。泣きたくなるくらいに。
「簡単に行ける場所じゃないし、戻ってこれる保証もないんだよ」
「そ、そうなの?」
「優奈ちゃんがいたのは夢の世界。つまり、誰かの空想の世界。そこは、死んだ人たちが好む『幸せ』のエネルギーがいっぱい詰まってるの」
「しあわせ…?」
「どんなに精巧な空想を思い浮かべても、いつかは消えるか死者に喰われて無くなるの」
嫌なニオイがした。
「じゃあ、ふたりは…!」
「このままだと……」
無くなるということは、戻る術が無くなる…?なら、こちらから連れ戻すほかない…?
…だめ、あんまり上手く考えられない。
「早く連れ戻さなきゃいけないんだけど…優奈ちゃん、手伝ってくれない?」
わざわざ私に頼むということは、それほどの事態ということ。この前の瑠夏ちゃんの身のこなしを見ていたら、素人が見ても分かるくらいに体が軽く見えた。
「私、足手まといじゃない?」
「ふたりを連れ戻すには、優奈ちゃんがいないとダメなんだよ」
「そんなこと言われても、何をすれば…」
「いてくれるだけで大丈夫。あとは私が守るから」
そんな楽な話、あるのかな。いや、私も自分の身は自分で守れるくらいにはならないと。
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