終わらない夢 II
「本当に来たかったのは、ここ」
「…入って大丈夫?」
「大丈夫だよ!」
看板もない、扉や壁はボロボロ、怪しい雰囲気がただようお店。…お店なの?
「こんにちは〜」
「瑠夏ちゃんか。いらっしゃい…そっちは?」
「友達の優奈ちゃん。かわいいでしょ」
「ど、どうも」
「俺は女に媚びたかねえんだ」
「そうでした。ねえおじさん、前言ってたやつ、できてる?」
「まったく…無理な注文するよなあ、あんた」
店主が取り出したのは、綺麗なドレス。女の子なら、一度は着てみたいようなかわいいドレス。
「すごい!さすがだね!」
「フン」
「あ、そうだ。優奈ちゃんに説明してなかったね。ここは服の仕立て屋さん。すっごくかわいい服も頼めるんだよ!」
「瑠夏ちゃんだからって何回言やぁわかるんだ」
「へへへ。いつもありがとねっ」
「じゃーん!かわいいでしょ!」
「かわいい…!でも、なんで?」
「決まってるでしょ」
「パーティに出るため!!」
…はい?
「パーティ?」
「そ!今日の夜、あそこのでっかい建物でダンスパーティがあるんだ!」
このドレスは、つまりそのための衣装と。…お金かかってそうだなあ。
「はい、これ」
「え?私?」
「うん。これは優奈ちゃんのドレス」
「ええ!?」
私、こんな綺麗でかわいいドレス…似合わないでしょ…。
「私、自分の持ってるし!」
「…そ、そう」
手渡されたはいいけどさ、これ…ひょっとして。
「私も出るの?」
「そうだよ!」
「はあ!?」
「イヤ?」
「嫌だよ…恥ずかしい」
「そっか。じゃあ、あっちで着替えよう」
「人の話聞いてる?」
「うんうん、似合ってる!」
「恥ずかしい……」
「かわいい!でしょ?おじさん」
「知らね……おお」
なにが『おお』なの。微妙な反応しないでよ。
「そろそろ時間だし、一緒にいこっ」
「……うう」
「じゃ、またねおじさん!」
「早く出てけ、ガキんちょ」
あちこち盛られて、なんだか歩きにくい。見た目は可愛いんだけど、本当に動きづらい。世の女の子たちは、みんな平然と着こなしてるんだからすごいよね…。
「そろそろ夜になるから、私から離れないでね」
「え?」
「変なおじさんが寄ってくるから」
いわゆるナンパってやつかな。たしかにそれは困るかも。
「ようお嬢さんたち、俺たちと遊ばない?」
「きっとハマるぜ〜」
「ほら、噂をすれば」
少し暗くなり始めたからって、こんなにすぐ出てくるのか…。どう考えたって真夜中の方がしやすいだろうに。
「行こっ」
「なあそう言うなって」
そのとき、いきなり腕を掴まれた。
このままじゃまずい。
「ちょっ…!」
「なあ、こっち来いよ」
「離して!」
「あんたら、俺の女に何か用?」
声の主は、聞き馴染みがある。
「あ、ありませんんっ!!」
「やべ、逃げねえと」
おそらくその人を見た途端に、慌てて逃げていった。どれだけ顔が知れてるんだろう。
「ロン…あんた、何しに来たの?」
「何もクソも、お前らが出てこないから迎えに来たんだよ。神社で見かけたのに、気づきもしねえでよ」
神社…いたっけ。あんまり周りを見てなかったから、気付かなかった。
「つか、お前らなんでそんなオメカシしてんの?」
「ダンスパーティに行くんだけど、ロンも来る?」
「いかねえよ」
そんな会話を横目で見ながら、自分自身に戸惑った。
『俺の女』って…ふだんなら絶対言わなさそうな言葉。
私を守ってくれた、ってことで、いいのかな。自惚れすぎてるかな。
「…入って大丈夫?」
「大丈夫だよ!」
看板もない、扉や壁はボロボロ、怪しい雰囲気がただようお店。…お店なの?
「こんにちは〜」
「瑠夏ちゃんか。いらっしゃい…そっちは?」
「友達の優奈ちゃん。かわいいでしょ」
「ど、どうも」
「俺は女に媚びたかねえんだ」
「そうでした。ねえおじさん、前言ってたやつ、できてる?」
「まったく…無理な注文するよなあ、あんた」
店主が取り出したのは、綺麗なドレス。女の子なら、一度は着てみたいようなかわいいドレス。
「すごい!さすがだね!」
「フン」
「あ、そうだ。優奈ちゃんに説明してなかったね。ここは服の仕立て屋さん。すっごくかわいい服も頼めるんだよ!」
「瑠夏ちゃんだからって何回言やぁわかるんだ」
「へへへ。いつもありがとねっ」
「じゃーん!かわいいでしょ!」
「かわいい…!でも、なんで?」
「決まってるでしょ」
「パーティに出るため!!」
…はい?
「パーティ?」
「そ!今日の夜、あそこのでっかい建物でダンスパーティがあるんだ!」
このドレスは、つまりそのための衣装と。…お金かかってそうだなあ。
「はい、これ」
「え?私?」
「うん。これは優奈ちゃんのドレス」
「ええ!?」
私、こんな綺麗でかわいいドレス…似合わないでしょ…。
「私、自分の持ってるし!」
「…そ、そう」
手渡されたはいいけどさ、これ…ひょっとして。
「私も出るの?」
「そうだよ!」
「はあ!?」
「イヤ?」
「嫌だよ…恥ずかしい」
「そっか。じゃあ、あっちで着替えよう」
「人の話聞いてる?」
「うんうん、似合ってる!」
「恥ずかしい……」
「かわいい!でしょ?おじさん」
「知らね……おお」
なにが『おお』なの。微妙な反応しないでよ。
「そろそろ時間だし、一緒にいこっ」
「……うう」
「じゃ、またねおじさん!」
「早く出てけ、ガキんちょ」
あちこち盛られて、なんだか歩きにくい。見た目は可愛いんだけど、本当に動きづらい。世の女の子たちは、みんな平然と着こなしてるんだからすごいよね…。
「そろそろ夜になるから、私から離れないでね」
「え?」
「変なおじさんが寄ってくるから」
いわゆるナンパってやつかな。たしかにそれは困るかも。
「ようお嬢さんたち、俺たちと遊ばない?」
「きっとハマるぜ〜」
「ほら、噂をすれば」
少し暗くなり始めたからって、こんなにすぐ出てくるのか…。どう考えたって真夜中の方がしやすいだろうに。
「行こっ」
「なあそう言うなって」
そのとき、いきなり腕を掴まれた。
このままじゃまずい。
「ちょっ…!」
「なあ、こっち来いよ」
「離して!」
「あんたら、俺の女に何か用?」
声の主は、聞き馴染みがある。
「あ、ありませんんっ!!」
「やべ、逃げねえと」
おそらくその人を見た途端に、慌てて逃げていった。どれだけ顔が知れてるんだろう。
「ロン…あんた、何しに来たの?」
「何もクソも、お前らが出てこないから迎えに来たんだよ。神社で見かけたのに、気づきもしねえでよ」
神社…いたっけ。あんまり周りを見てなかったから、気付かなかった。
「つか、お前らなんでそんなオメカシしてんの?」
「ダンスパーティに行くんだけど、ロンも来る?」
「いかねえよ」
そんな会話を横目で見ながら、自分自身に戸惑った。
『俺の女』って…ふだんなら絶対言わなさそうな言葉。
私を守ってくれた、ってことで、いいのかな。自惚れすぎてるかな。