涙の涸れる日
 離婚が成立した佑真は、それでも仕事は熟していた。

 京都のファッションビルが七月下旬のオープンに向けて滞りなく順調に進んでいる。

 俺は仕事に生きようと心に決めていた。

 そして無事仕事を終えて安堵していた。

 今回も周防社長からは感謝の言葉をもらい、益々仕事中心の日々を過ごしている。

 その間にマンションから退去する準備も進めた。

 紗耶と選んだ家具や家電も捨てられずに新しく契約したマンションに運んだ。
 
 紗耶と暮らしたマンションより手狭だが一人暮らしには充分だった。

 元々仕事が好きで今となっては寝に帰るだけ。

 食事も外食かコンビニの弁当で済ます。

 紗耶がどんなに一生懸命に栄養のバランスや彩りを考え工夫して作ってくれていたのか今になって良く分かる。

 本当に最低な夫だったと悔やんでも、もう遅い……。



 そして八月……。

 佑真に辞令が……。


 高梨佑真

十月一日付

 ニューヨーク支社営業部に転勤を命ず



 そして同じ頃……。

 田所由布子にも……。

 上海支店に転勤を命ず



 
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