涙の涸れる日

新たな人生

 部屋に籠もって泣いてばかりいた紗耶が……。

「紗耶、顔色が良くなったわね」

「そうかな……。お祖母ちゃんのお陰なの。行って良かった。懐かしい場所にもたくさん行けたし」

「そう。流石お祖母ちゃんね」

「御茶碗も気に入ってくれたよ」

「良かった。まぁ、気に入ってくれる自信はあったけどね」

「さすが親子なんだね」

「紗耶と母さんも親子ですけど」

「そんな事、分かってる。ごめんね。いろいろ心配掛けて……」

「親が娘の心配をするのは仕事みたいなものよ」

「私ね。樹里たちに会ってこようと思ってるの。いつまでも隠しておけないし……」

「そうね。そういう気持ちになってくれたのは嬉しいかな」

「夜の飲み会になるかもしれないけど良いかな?」

「ちゃんとタクシーで帰っていらっしゃいね」

 その夜、紗耶は樹里と里香、桜子にラインを入れて四人で会う約束をした。
 学生時代よく行った居酒屋で。

 明後日、きちんと話そう。

 ちゃんと前を向いて生きていこう。

 これから先の人生の方が、ずっと長いのだから……。

 もう後ろを振り向かない。
 悲しい涙は流さない。


< 113 / 152 >

この作品をシェア

pagetop