涙の涸れる日
「紗耶、痩せたなって思ったんだけど……」

「うん。する気もないのにダイエット出来ちゃったみたい」

「紗耶……」

「うん。飲もう。しっかり食べて。ね」

「ありがとう。報告は以上。楽しく飲もう」

「じゃあ、紗耶の新しい人生に乾杯しよう」

「うん。そうだね」

 それからは、いつもの楽しい飲み会。

 みんな気を遣ってくれているのは痛い程分かるから……。
 私も笑顔で元気な紗耶で過ごした。

「紗耶、これからまた会社に戻るの?」

「お父さんの会社だもんね。問題はないよね」

「まだ決めてないけど。多分、秘書には戻らないと思う」

「そっか」

 そこで桜子が
「ねぇ、紗耶。モデルする気ない?」

「もう、冗談止めてよ。私、162cmしかないのよ。モデルには全然足りないわよ」

「違うの。良く聞いてね。半年後に創刊予定の雑誌があるの。二十代から三十代向けのファッションとかインテリアとか載せる月刊誌なんだけど、表紙モデルを探してるの」

「だから……」

「ファッションショーのモデルを探してるんじゃないの。紗耶の身長は今の二十代、三十代の平均身長なの。雑誌を買う女性の等身大のモデルを探してるの」

「…………」

「紗耶。やってみたら?」

「うん。良いと思う」


< 115 / 152 >

この作品をシェア

pagetop