涙の涸れる日
佐伯 煌亮

煌亮(こうすけ)

 珍しく仕事が早く終わって一人暮らしのタワーマンションに帰って来た。

 夕食にペペロンチーノを作り食べ終わった頃、携帯が鳴った。
 
 見ると樹里から……。

 大学時代、同じ英文学科で知り合った、本多紗耶の親友。
 世話好きで姉御肌、頼もしい同級生だ。

 紗耶と里香と桜子といつも仲良く一緒に居た。

 何故か、それに僕まで加わって五人で居る事が多かった。

「樹里?」

「こんばんは。久しぶり煌亮。今良い?」

「うん。こんな時間に家に居るのは珍しいけどな。何かあったのか?」

「うん……。それがね……」

「そんなに言い難い事か? 結婚でも決まったか?」

「なら良いんだけど……。紗耶がね……」

「紗耶がどうかしたのか?」

「高梨先輩と離婚したの」

「はっ? えっ? 離婚って……」

「そう。まだ二年経ったばかりなのにね……」

「え? 何で?」

「先輩に女が居て……。要するに浮気されてたのよ。あぁ、言ってても腹が立つわ」

「紗耶は? どうしてる? 大丈夫なのか?」

「うん。無理してる感は否めないけどね……」

「そうか……」

「とにかく知らせておこうと思って」

「あぁ。ありがとう」

「じゃあ、また飲みにでも行こうね。ちゃんと都合つけてよね」

「あ? あぁ、分かったよ」

「じゃあね」

「あぁ」
 
 はぁ? 離婚したって……。


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