涙の涸れる日
 さっきのスタジオのドアを開けて入って行く桜子に、続いて入る。

「お疲れさまです」
桜子の声。
「えっ? 亀井編集長。いついらしたんですか?」

「武田が写真を送ってきたから、それ見て飛んで来たよ」

「ありがとうございます」

「彼女だね?」
ん? 私を見てる?

「あぁ。はい。そうです」

「他に契約は?」

「いえ。まだ新人なので」

「他に仕事を入れるなよ」

「了解です」

「桜子ちゃんがマネージメントするんだね?」

「はい。私が担当しますから、大丈夫です」

「撮影だけど、来週良いかな?」

「はい。大丈夫です」

「実は武田さん来月からミラノに暫く行くから、次号からカメラマン交代するんだよ」

「えっ? そうなんですか?」

「でも、彼女を撮ってから行きたいって言うから」

「ありがとうございます。紗耶、決まったよ」

「えっ? あ、はい。ありがとうございます」

「名前は決めてるの?」

「うーん。紗耶ですけど、アルファベットかカタカナか平仮名かで悩んでます」

「さや。か……。彼女の柔らかいイメージからだと平仮名が良くないか」

「さや。良いですね。紗耶、平仮名で『さや』でどう?」

「あぁ、はい。良いですよ……」

「じゃあ来週で、時間は連絡するよ」

「分かりました。宜しくお願いします。紗耶行くよ」

「ありがとうございました。失礼します」


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