涙の涸れる日
「ところで、その彼女は何処のどういう人なんだ?」

「あぁ。名前は本多紗耶。大学の英文学科の同級生なんだ」

「本多? 本に多いの本多か?」

「うん。そうだけど……」

「もしかして本多不動産の?」

「あぁ。父親が社長をしてる」

「そうか。そうなのか……」

「どうしたの?」

「シスコンの兄貴が居ないか?」

「あぁ。飲み会の時に、迎えに来てたイケメンのお兄さんなら居るけど……」

「本多凌太の妹か? 可愛いって噂の」

「えっ? 紗耶を知ってるの?」

「会った事はないが、知ってる。彼女の兄貴の本多凌太は大学のゼミの一年後輩だ」

「本当に?」

「世間は狭いって言うけど本当なんだな」

「全然知らなかったよ」

「大学の時、ゼミの仲間が妹と居る凌太を見掛けて、めちゃめちゃ可愛い女子高生とデートかって冷やかされて……。妹だって言い訳してたよ。本当に妹だったけどな。そうか」

「そんな事があったんだ。僕は高校生の時の紗耶は知らないからな」

「凌太とは今でも時々飲みに行くんだよ」

「えっ? そうなの?」

「俺がセッティングしてやろうか?」

「えっ? どうやって?」

 規智は携帯を出してディスプレイをタップした。
「凌太か? 久しぶりだな。お前と飲みたいと思って電話した。都合はどうだ? 次の土曜日は? そろそろ可愛い妹を紹介してくれても良いんじゃないか? もう女子高生じゃないだろ。いつものバーで待ってる。じゃあな」

「兄さん……」

「という事だ。お前も来いよ。シリウスってバーだ」

「僕も偶に行くから知ってるけど……」

「凌太は俺の頼みは断らない。とにかく任せておけ」

「分かったよ……」


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