涙の涸れる日
 そこへ
「こんばんは」

「えっ? 煌亮? どうしたの?」

「兄貴に呼ばれた」

「自己紹介がまだだったね。佐伯規智です」

「佐伯って……」

「煌亮の三番目の兄です」

「えっ? そうなの?」

「うん。三番目の兄貴」
煌亮はそう言って笑った。

「煌亮、席変わるよ」
規智さんはグラスを持って、お兄ちゃんの隣の席に移動した。

私の隣に座った煌亮は
「久しぶりだね」

「うん。そうだね」

「ダイキリお願いします」

「きょうはお休みなの?」

「土曜日だよ。休日出勤もないとは言わないけどね」

「仕事、忙しいの?」

「まあ、普通じゃないかな」

「おかわりしようかな?」

「駄目だよ。紗耶は、シンデレラお願いします」

「煌亮まで……。お兄ちゃんが二人居るみたい……」

 隣の席で、お兄ちゃんが笑ってる。
「煌亮君。ナイスだよ」
まだ笑ってる……。

「あ、はい。任せてください」
煌亮も笑ってる……。

 何かこの二人、妙に気が合ってない……?


 みんなで飲んで喋って楽しい時間を過ごせた。

「凌太、折り入って話がある」

「あぁ、はい」

「煌亮、紗耶ちゃんを送ってあげてくれるか?」

「あぁ、うん。分かった」

「ありがとうございました。とても楽しかったです」

「紗耶ちゃん、また飲もうね」

「はい。じゃあ失礼します」

「煌亮君、悪いね。宜しくお願いします」

「いえ。大丈夫です。ではまた。紗耶、行くぞ」

「うん」
 煌亮と紗耶がバーを出て行った。


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