涙の涸れる日
「話って何ですか?」

「煌亮と紗耶ちゃんの事だ」

「紗耶ですか?」

「煌亮は大学時代から紗耶ちゃんを好きだったそうだ」

「えっ? そうなんですか」

「敢えて友達というポジションで居たんだそうだ。告白して振られたら友達でも居られないからな」

「煌亮君、気遣いの出来る良い男ですよね。最初から煌亮君だったらって思いますよ」

「紗耶ちゃん、辛い思いをしたんだそうだな」

「えぇ。とんでもない男でしたよ。紗耶をあんなに傷付けて……」

「健気に乗り越えて来たんだろうね」

「そうですね。随分立ち直って来てますね」

「お前やご両親が支えて来たんだろうな」

「良い友達も居てくれるんですよ」

「煌亮との事、考えてみてもらえないかな? あいつは紗耶ちゃんを傷付けるような事はしない。ずっと八年も片想いしてる位だからな」

「でも、良いんですか? 紗耶はバツイチですよ。佐伯家のご両親に認めてもらえるとは……」

「いや。それは絶対にないよ。実は母さんは再婚になるんだ。父さんとは」

「えっ? そうなんですか?」

「煌亮も知ってるんだが、母さん二十歳の時に望まれてある名家に嫁いだ。二年経っても子供を授からなくて跡継ぎを産めない嫁は要らないと離縁されたんだそうだ」

「そんな事があったんですか」

「ボロボロだった母さんを父さんは愛して結婚したんだ。産めないどころか四人も息子を産んだけどな」

「お父さんは思い遣る心を持った立派な方なんですね」

「煌亮も紗耶ちゃんを幸せにしたいと思ってるんだ。二人を見守ってもらえないだろうか」

「先輩……。ありがとうございます。俺も紗耶には幸せになって欲しいんですよ。傷付いたままで諦めてもらいたくないと思います」

「あの二人が結婚したら、凌太とは兄弟になるんだな」

「あぁ、そうですね。何かピンと来ないですけどね」

「俺は凌太と兄弟になれたら嬉しいよ」

「先輩。俺もですよ」

「もうちょっと飲むか。気の早い祝杯だ」

「そうですね。まだまだいけますよ俺は」

「俺が凌太に負けると思うか?」

「俺の方が若いですからね」

「たった一つ違うだけだぞ」

「潰れないでくださいよ」

「それは俺のセリフだ」


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