涙の涸れる日
 また車に乗って暫く走る。高速を降りて湖のほとりで車を停めた。

「少し歩くけど、大丈夫か?」

「うん。大丈夫だよ」

 真っ青な空は眩しく輝いて、夏の陽射しは容赦なく強いけれど……。

 自然が溢れる緑の続く道を暫く歩いた。




 すると……。

 目の前に広がるのは一面の向日葵(ひまわり)畑……。

「キレイ……。凄い。向日葵しか見えない……」

「紗耶に見せたかったのは、この風景なんだよ」

「うん。ありがとう。凄く素敵……」

「紗耶。明日、誕生日だろ?」

「えっ? あっ、そうだった。誕生日なんて忘れてたな」

「このたくさんの向日葵が僕からのプレゼントだから。紗耶、向日葵の花言葉、知ってるか?」

「私、そういうのよく知らないの」

「帰ったら調べてみて」

「うん。でも本当にキレイ。何か凄く幸せな気持ちになる……」

 何でだろう? 涙が零れる……。
 悲しくもないのに……。

「紗耶、僕の前で無理しなくて良いんだよ」

「煌亮……」

「八年の付き合いだ。友達として」

「うん。そうだね」

「でも、僕はその友達の枠を越えたいと思ってるよ」

「えっ?」

「紗耶。ずっと好きだった。でも言えなかった。告白して振られる位なら友達のポジションで居た方が楽だったんだ」

「煌亮……」

「大学で紗耶に出会って、ずっと片想いだ。あれから誰とも付き合って来なかったって言ったら引くか?」

「えっ? 煌亮、女の子に人気あったよね? 綺麗な子や可愛い子に告白されてるの私、何度も見掛けたよ」

「あれは僕がもててた訳じゃないよ。みんな僕の家の佐伯の名前に惹かれてただけだよ」

「そんな事ないと思うよ」

「紗耶はそういう目で僕を見なかった。桜子も樹里も里香も……。だから五人で居ると楽だったんだ。本当に友達だと思えたから」

「うん」

「友達としてじゃなく、一人の男として考えてもらえないかな?」


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