涙の涸れる日
佑真と紗耶

再会から

 再会してから、紗耶の事が頭から離れなくなった。

 仕事をしていても、ふと紗耶の笑顔が過ぎる。
 それだけで幸せな気持ちになれる俺はかなり重症だ。

 あのおばあさんはどうしているだろう。
 紗耶と俺の和服を着たキューピッドだなと、あのおばあさんに感謝する。

 学生時代の片想いの相手に偶然出会う確率はどれ位だろうか。
 きっとかなり低いんだと思う。

 この奇跡的な出会いを無駄にはしない。



 就職してから会社の女子達、同僚や後輩、中には先輩も居たが、付き合ってくださいと告白される事は何度もあった。

 社内恋愛禁止ではないようだが、会社は仕事をする所だ。社内で恋愛のゴタゴタに巻き込まれるのは御免だ。
 その考えは今も変わっていない。


 紗耶に再会した今は、もう紗耶以外の女性など視覚の隅にも入らない。

 あれから紗耶の携帯番号を登録して、LINEを入れようかどうしようかと、まるで初恋に悩む中学生のような自分に苦笑する。


 そんな時、警察署から電話があった。
 あの時のおばあさんが元気になられて、助けてくれた俺と紗耶に会いたいと言っているらしい。

 個人情報は教えられないので、良かったら、まだ入院中の病院に会いに行ってもらえないだろうかという話だった。

 その日の夜、初めて紗耶の携帯に掛けた。
 紗耶にも連絡が入り俺に電話しようと思っていたところだと言う。

 その週末の土曜日に約束して、病院にお見舞いに行こうという事になった。


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