涙の涸れる日
「急にイギリスって言われても……」

「紗耶は言葉にも困らないだろう?」

「でも……」

「両親にも兄貴たちにも、紗耶の事は話してある。みんな早く紗耶を捕まえてイギリスに連れて行ってやれって。後は紗耶が僕に付いて来るって決めるだけだよ」

「…………」

「僕は諦めるつもりはないけどね」
そう言って煌亮は優しい笑顔を見せた。

「私がイギリスに付いて行っても良いの?」

「一緒に行ってくれるのか?」

「煌亮の傍に居たい……」

「紗耶……。ありがとう」

 思わず紗耶を抱きしめていた……。
 こんなにも華奢だったなんて………。
 知らなかった……。

「煌亮……」
僕の腕の中で紗耶が呼ぶ。

「うん。なに?」

「私ね……」

「うん」

「自分で思ってたより煌亮が好きみたい……」

「紗耶……」
愛しさが溢れそうだ……。

「煌亮……。大好き……」
抱きついてくる紗耶は可愛くて可愛い過ぎて……。

「僕は愛してるよ。紗耶が思うよりずっとね」
幸せってこういう事を言うんだと思った。
八年の片想いが報われる。
諦めなくて良かった。

 紗耶を抱きしめて、その温もりに胸がいっぱいになる。
 
 どんな事があっても紗耶を守れる男になろうと改めて決意していた。


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