涙の涸れる日
 十月も半ばを過ぎた頃……。

 煌亮は紗耶を初めて佐伯家に連れて来ていた。

 ご両親は勿論、三人のお兄さんも集まってくれている。

「本多紗耶です。宜しくお願いします」

「紗耶ちゃん、緊張しなくても大丈夫だよ。みんな紗耶ちゃんを大歓迎してるんだから」
規智さんがそう言ってくださった。

「はい。ありがとうございます」

「煌亮の父の龍太郎です。良く来てくれたね」

「母の遥乃です。紗耶ちゃん、会えて嬉しいわ。娘が一人出来たようね」

「長男の貴継です。紗耶ちゃんこれから宜しくね」

「二男の賢匠です。会えるのを楽しみにしていたんだよ」

「僕はもう会ってるからね。来てくれて嬉しいよ。紗耶ちゃん」




「十一月に入ったら入籍しようと思ってる」

「お式は?」

「式はイギリスに行ってから、二人だけで古城で挙げるつもりだ」

「まあ、紗耶ちゃんのウェディングドレス見られないの?」

「いや。こっちでウェディングドレスは購入予定だから、母さん、試着に付き合ってくれたら見られるよ」

「そうね。じゃあ、紗耶ちゃんのお母さまと一緒に行くわ」

 女の子が欲しくて堪らなかった母は、もう既に紗耶を自分の娘だと思っているようだ。

 三人の兄たちは未だに独身。

 遊んでいる訳ではないし、政略結婚など両親は考えてもいないだろう。

 いずれ、あと三人の娘が出来る母は幸せだろうと思う。


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