涙の涸れる日
「失礼します」
病室に入る。すると

「良く来てくださったわ」
ベッドを起こして座るおばあさんに笑顔で言われた。

「こんにちは。お元気そうですね。本当に良かった」
紗耶が話し掛けた。

「お二人のお陰よ。ありがとう」

「母を助けてくださって本当にありがとうございました。私こういう者です」
名刺を差し出して言う紳士は五十代位だろうか。
 
 その名刺には、ブライダル藤崎 代表取締役社長 藤崎 潤一と書かれていた。

「えっ、あの有名な結婚式場の?」

「はい。ご存知でしたか?」

「もちろんです。ブライダル藤崎といえば憧れの結婚式場ですから」

「ありがとうございます」
上品な紳士は頭を下げた。

「潤一、お二人は私に会いに来てくださったのよ」

「母さん。そうでした」

「もっと近くで、お顔を見せてくださいな」

「さぁ、どうぞ」
と促されベッドの近くに進んだ。

「まぁ、綺麗なお嬢さんと、こちらはイケメンさんねぇ」
笑顔が上品なおばあさん。

「とんでもない。お体いかがですか?」

「お陰さまで。早く退院したいんですけどね。息子が大事をとって色々検査してもらえって」
そう言いながら息子さんを見る目が優しい。
素敵な親子だと思った。


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