涙の涸れる日
「お二人はお知り合いなのかしら?」

「あぁ、はい」
俺が答えた。

「まぁ。そうなの。とてもお似合いだわ」

「母さん。それは余計な事ですよ」

「そうね。でもウェディングドレスがとてもお似合いになるわよ。素敵な花嫁さんになるわ」

「ありがとうございます。憧れます」

「ご予定はないのかしら?」

「はい。まだまだです」
紗耶が応える。

 紗耶のウェディングドレス、似合うだろうなと俺も思った。

「ご結婚が決まったら、是非ご相談ください。母の命の恩人ですから、出来るだけの事をさせて頂くつもりでおります」

「ありがとうございます。その時は宜しくお願い致します」


 病室に長くは居られない。

「お会い出来て嬉しかったわ。ありがとう」
おばあさんの言葉を聞いて

「お大事になさってくださいね」
「では、これで失礼します」

 病院を後にした。


「お元気そうで本当に良かった」

「そうだね」
そう応えながら、この後どうしようかと思いを巡らせる。
「この後、何か予定ある?」

「いいえ。特には……」

「この近くの美術館で絵画展をやってるんだけど、絵には興味ないかな?」

「いえ。絵を見るのは好きです。時々兄と見に行くんですよ」

「そうなんだ。じゃあ行ってみる?」

「はい。是非」
何度見ても彼女の笑顔は特別可愛い。


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