涙の涸れる日
 美術館の中にカフェもある。

「わぁ。素敵なカフェ」

「お茶の時間にしようか?」

「そうですね。ご馳走しなくちゃ」

 笑顔が本当に可愛くて綺麗で見惚れてばかりいる。

 ガラス張りで美術館が見渡せるカフェで、俺はアイスコーヒー、彼女はアイスレモンティーを注文する。

「紗耶ちゃんって呼んで良いかな?」

「うーん。私、あんまり紗耶ちゃんとか紗耶さんとか呼ばれなくて……。紗耶で良いですよ。友達もみんなそう呼ぶし」

「友達の一人に加えてもらえたのかな?」

「先輩は先輩ですよ。高梨先輩?」
この笑顔は本当に可愛過ぎる……。

「また、きょうみたいに誘ったら会ってくれるかな?」

「えっ? それは友達としてですよね?」

「もちろん友達の一人として」

「はい。良いですよ」

「じゃあ、次はどこに行こうか?」

「うーん。私あんまり男の人と出掛けた事がなくて……。先輩はいつもどういう所に出掛けるんですか?」

「そうだな? そういえば俺もあんまりないかな?」

「えぇ? 先輩いつも綺麗な女性と一緒に居たじゃないですか」

「そうだけど……」
居酒屋とかバーとかホテルしか行った事ないなんて言えない……。
改めて考えると俺って最低な男だよな。

 だけど……。
 紗耶と一緒なら変われる気がしていた。

「水族館とか動物園とか?」

「何か小学生の遠足みたいですね」
笑う顔が可愛過ぎて、もう反則だ。

< 19 / 152 >

この作品をシェア

pagetop