涙の涸れる日

　紗耶の実家にも、ご挨拶に伺った。

「初めまして。高梨佑真と言います」
　
　紗耶から聞いていた、厳格な父親そのもの。

「それで?」

「はい。紗耶さんとの結婚を考えています」

「そうですか。紗耶は?　それで良いのか?」

「はい。佑真さんと結婚しようと思います」

「そうか」
そのまま黙り込む父親。

「あなた……」
母親が沈黙に堪りかねて声を掛ける。

「私にとって紗耶は大切な娘です。必ず幸せにすると約束出来ますか?」
鋭い目つきで、まるで威嚇されている気分だ。

「はい。約束します」
父親の目をじっと見詰めて答えた。

　その時、部屋に入って来たのは、おそらく紗耶のお兄さん。かなりのイケメンだ。
「紗耶、本当に良いのか?」
あまり歓迎されている気がしない。

「お兄ちゃん……。うん。佑真さんと結婚します」

「そうか……」
そう言うと部屋から出て行った。

「高梨さん、紗耶を宜しくお願いしますね」
母親の言葉に救われた気がしていた。

「はい」


　そのまま紗耶の実家を後にした。

「ごめんね。お父さん普段はあんなじゃないんだけど……」

「それだけ大切な娘なんだよ。紗耶は」

「そうかな?」

「そうに決まってるだろ」

「うん」