涙の涸れる日
結婚

幸せを願って

 それから紗耶との結婚に向けて準備を始めた。

 来年の五月と決めた。

 あの時のおばあさんの結婚式場も考えたが……。

 紗耶は派手な結婚式、披露宴はしたくないと言い出した。

 父親の会社関係の知らない人ばかりの披露宴は嫌だと……。

 手づくりの温かさが感じられる、レストランウェディングが良いと譲らない。

 貸し切りで使わせてくれるレストランを探す。

 そこで、お気に入りのイタリアンの店に聞いてみた。

 人数にもよりますが、貸し切りでウェディングパーティーもお受けしておりますと言われた。

 招待する人数を、家族、友人とリストアップして、大体の数を出した。

 レストランには喜んでお受けしますと言ってもらえた。
 お料理はバイキング形式で予算を決めてお願いした。

 後は、紗耶のウェディングドレスだ。

 有名なドレスの店に紗耶と行ってみた。

 純白のウェディングドレスがたくさんある中で、紗耶が選んだのは、ビスチェと言われる肩を出してウエストまではピッタリしていて、ウエストから幾重にも柔らかい生地の重なったドレス。しかもお色直しはしないと言う。

 せっかく来てくださる招待客をお待たせしてまでドレスを替える必要はないと。


 お嬢さんとして育ってきた紗耶は、もっと派手な華やかな物を希望すると思っていた。

 意外だった。
 堅実な良い奥さんになる紗耶が容易に想像出来た。


 ただ住む所が決まらない。
 今の俺のマンションに二人で住むには狭すぎる。

 紗耶の父親は不動産会社の社長だ。
 二人で紗耶の父親に相談に行った。

 そこで、二月の末に転勤で空く予定の都心に近いマンションがあると教えられた。
 まだ新しい物件で俺の通勤にも便利な場所だった。

 住んでくれるなら家賃は要らないと。
 二人へのプレゼントだと言われた。

 紗耶が派手な結婚を望んでいないのを分かって父親なりに気遣ってくれたのだと感謝した。

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