涙の涸れる日
「高梨先輩、おめでとうございます」
紗耶の友人の里香さんと樹里さんが来てくれた。

「ありがとう。あぁ、紗耶は桜子さんが見てくれてる」

 控室に連れて行った。
 ノックする。

「紗耶。里香さんと樹里さんが来てくれたよ」

「はい。入ってもらって」

 ドアを開けると……。

 ウェディングドレスの紗耶が支度を終えて鏡の前に立って居た。

「紗耶、おめでとう」
「凄く綺麗」
うっとりと見詰める二人。

「ありがとう」

「でしょう? ファッション誌のモデルより、断然綺麗よ。紗耶、モデルやらない?」

「私は晴れて専業主婦になるんです」

「勿体ないなぁ。私、マネージメントするわよ」
残念そうな桜子さん。



 紗耶のあまりの美しさに息を呑み感動している事はおくびにも出さないで……。

 いやいや、紗耶は俺のだから、俺だけの紗耶だから……。と心の中で呟く。


「高梨先輩。こんなに綺麗な紗耶を泣かせるような事があったら、私達黙ってませんからね」

「そんな事しないよ。信じてくれないかな?」

「今は綺麗な紗耶に免じて信じます」

「でも、何かあったら許しませんよ」

 紗耶の友達は紗耶の強い味方のようだ。

 大学時代の俺を知っている彼女たちには敵わない……。


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