涙の涸れる日
 適当に料理も注文し、二人で飲み始めた。
 樹里はビール。私はライムの酎ハイで乾杯した。

 樹里は総務に配属され、年配のお局が教育係だそうで、毎日大変だと言っていた。
 でも持ち前の明るさと元気さで、近頃はランチにも一緒に行くくらい仲良くなったらしい。さすが樹里だ。

 昔からムードメーカーで面倒事も上手く纏めてくれる。
 飲み会の幹事は樹里と昔から決まっていた。

 暫く飲んで喋っていると、里香が現れた。
「ごめん。遅くなって」

「お疲れさま。里香先生」

「止めてよ。まだ学校に居るみたいじゃない」

「里香先生って呼ばれてるの?」

「偶々、今年一緒に赴任した先生が同じ斉藤だったから、私は里香先生なの」

「可愛くて良いじゃない」

「なんかね。生徒達に友達扱いされてるの」

「私はお姉さんみたいな若い先生が居たら良かったなって思うけど」

「まあね。懐かれてる気はするわ。すみません。生中お願いします。きょうは飲むわよ」

「どうぞ。いくらでも飲んで。女子会プランにしといたから」

「さすが樹里、気が利く」
はい。生中ひとつ。と里香のビールが届いて

「改めて、乾杯〜」

「あぁ。美味しい」
相変わらず良い飲みっぷりの里香。

「そういえば、桜子と煌亮は?」

「桜子は遅くなるって。煌亮はロスに出張」

「そっか。取り敢えず三人で盛り上がろう」

 お互いの近況報告や大学時代の話で楽しい時間を過ごした。

 桜子は樹里に電話して来て
「ごめん。きょうは無理みたい」

「忙しいんだね。うん。また誘うよ」
 絶対に誘ってよって言ってたんだそう。
 やっぱり芸能界は特殊な世界なんだなと改めて思った。


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