涙の涸れる日
 シャワーを浴びてリビングに戻ると着信音? 俺のじゃない。紗耶のバッグの中から聞こえる。
 ごめん。紗耶バッグ開けるぞ。
 見ると佑真。もう日付けが変わるぞ。

「紗耶? 何処にいる?」
焦った声が聞こえる。

「佑真君。今帰ったのか。随分遅くないか?」

「お義兄さん……。紗耶はどうかしたんですか?」

「そこに居たくないと言うから連れて来た」

「お義兄さんのマンションですか?」

「あぁそうだ」

「今から迎えに行きます」

「聞こえなかったのか? そこに居たくないって紗耶は言ってる。迎えに来ても紗耶は渡さない」

「…………」

「お前、紗耶に何をした?」

「何って? いえ何も……」

「よく考えてみるんだな。紗耶は暫く家で預かる」

「分かりました。紗耶を宜しくお願いします」

「頼まれなくても紗耶は俺の妹だ。紗耶を泣かせるような事をしてるなら、直ぐに何とかしろ」

「紗耶が泣いてたんですか?」

「あぁ。何年紗耶の夫やってるんだ。そんな事も知らなかったのか?」

「すみません……」

「切るぞ」



 通話を切って着信履歴に触れてしまった。何だこれは? 登録してない番号からの着信。しかも今日の。紗耶が俺に電話して来た少し前。紗耶は通話したようだ。誰だろう? 

 もしかして、この電話のせいで紗耶が泣いたのだとしたら……。

 俺は番号をメモした。必ず突き止める。


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