涙の涸れる日
 我社の日下部社長からは、今回の仕事も成功すれば、課長にと考えていると言われた。

 願ってもない光栄な話を受けない訳にはいかない。

 周防社長の会社は東京にあり、ほとんどの事はこちらで進めていける。

 でもやはり現場でしか分からない事も出てくる。

 五月にどうしても京都に行かなければならなくなった。しかもゴールデンウィークにだ。勿論泊まりになる。

 紗耶と沖縄に行く旅行の計画を立てていたのにキャンセルするしかなくなった。

 紗耶は
「お仕事なら仕方ないわよね」
と言いながらも寂しそうだ。

「ごめんな。この埋め合わせはするから。それにこの仕事が上手くいけば、課長に昇進出来そうなんだ」

「佑真が課長さんになるの? 凄い。おめでとう」
紗耶の笑顔は俺をとんでもなく幸せな気持ちにさせてくれる。

「まだ決まった訳じゃないよ」

「お仕事は大切よね。沖縄は今回は諦める」

 上目遣いで俺を見る紗耶が可愛くて思わず抱きしめた。髪にキスを落として唇を塞ぐ。
 紗耶から零れる甘い声が俺の理性を奪っていく。

「佑真。食事が冷めちゃうよ」

「今は紗耶が食べたい」

「もう。ダメよ。せっかく佑真の好きなグラタン作ったのに……」

「じゃあ仕方ないな。後で覚悟しとけよ」

「もう……。バカ」
恥ずかしそうな顔を見ると堪らなく愛しいと思う。

 その夜はグラタンも美味しく食べて……。

 紗耶の可愛く啼く声を堪能した……。


 
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