涙の涸れる日

京都

 ゴールデンウィークに入った初日から京都に向かうために新幹線に乗る。

 早朝から紗耶は
「お仕事、頑張ってね」
と嫌な顔ひとつせずに笑顔で送り出してくれた。
 本当に可愛い愛する妻だ。
 紗耶のためにも必ず仕事を成功させる。

 
 京都に着いてファッションビルの京都支社に向かう。
 周防社長、伊藤専務、田中常務、そしてこのプロジェクトに選ばれたメンバー達。
 七月のオープンに向けて文字通り休日返上で働いている。

 きょうは会議で図面を元にコンセプトの確認、明日はフロアに行き現場で仕事を進めていく。

 二日間、目の回るような忙しさだった。

 周防社長のご厚意でビジネスホテルではなく、かなり高級なホテルに宿泊させてもらった。

 仕事が終わり夜の食事を済ませるとホテルに帰りシャワーを浴びて寝るだけだったが。

 寝る前に紗耶に掛ける電話だけが俺の癒しだった。

「お疲れさま」
声を聞くだけで疲れも飛んでいく。

「紗耶」
出来ることなら紗耶を抱きしめて呼びたい。

「なに?」
声だけで可愛いなんて反則だ。

「あぁ。早く紗耶に会いたい」
紗耶に触れたい。

「私も佑真に会いたい」
紗耶も同じ思いだったらと勝手に解釈する。

 いや、きっと同じ思いだろう。
俺たちは愛し合っているのだから。

「仕事は今日終わったから明日なるべく早く帰るよ」

「疲れているんでしょう? ゆっくり眠って、それから帰って来てね」

「あぁ、ありがとう。紗耶、愛してる」

「私も愛してる」
はにかんで頬を染めている紗耶が容易に想像出来た。


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