涙の涸れる日
 疲れて眠る由布子の隣からベッドを降りてシャワーを浴びに行く。

 我ながら最低な気分だ。
 二度目の関係……。ありえない……。

 紗耶の顔が浮かぶ。

 罪悪感の塊のような今の自分……。

 由布子の濃厚なフレグランスが洗っても洗っても取れないような気がしてイライラする。

 何でこんな事してるんだろうと、くだらな過ぎて笑うしかない……。

 紗耶に知られる事が何より怖いと思う。



 俺がシャワーを浴びてる間に……。

 プライベートなスマホの紗耶の番号を由布子が自分の携帯に登録してるなんて考えもしなかった。

 
 スーツを着て、眠ったままの由布子に何も言わずに部屋を出て駅に向かう。

 何も考えたくないくらい疲れていた。



 マンションに帰りチャイムを押す。

「おかえりなさい」
紗耶が出迎えてくれる。

「ただいま」
そのまま紗耶を抱きしめる。

「お疲れさまでした」

「うん」

「……どうかしたの?」

「えっ? 何が?」

「うーん。何となく……」

「疲れただけだよ」

「そう?」

「あぁ」

 会話がぎこちない……。
 このモヤモヤした気分をどうすれば良いのか……。


 それから由布子からデパートの定休日前夜にアパートに来て欲しいと仕事用の携帯に連絡が来るようになる。

 自業自得だ。

 遊びまくっていた大学生の頃は特定の彼女は作らなかった。

 今は紗耶という大切な人が居るのに……。

 何をしてるんだろう俺は……。


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