涙の涸れる日
 それから三日後、兄と私は、兄の親友の加藤さんの弁護士事務所に居た。

「紗耶ちゃん、久しぶりだね」

「はい。ご無沙汰してました」

「あの頃も可愛かったけど、大人になって綺麗になったな」

「いえ。そんな事ありません」

「凌太から話は聞いた。辛かったね」

「いえ……」

「凌太、矢田の調査書は?」

「これだ」
書類の入った封筒を渡す。

「うん。流石だな。完璧だ。でどうしたい?」

「勿論、離婚だ。慰謝料も請求する。相手の女にもだ」

「まあ当然だな。今、住んでるマンションは?」

「あれは親父の持ち物だ。当然退去させる」

「賃貸契約はしてないんだな?」

「あぁ。親父も紗耶には甘いからな」

「それは、お前だろ?」

「まぁ。認めなくもないが……」

「ははっ。両方別々に呼び出しをかける。慰謝料の額はどうする?」

「相場はどれくらいだ?」

「まぁ、経済力や諸々で決まってくるが……。かなりふっかけても良いんじゃないか? しっかり罪を認めさせないとな」

「そうだな。任せるよ。金が欲しい訳じゃない。犯した罪の重さを思い知らせたいだけだ」

「分かったよ。また連絡する」

「あぁ。頼んだ」



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