脆姫は過去に生きる
「あの時、咲は私のために離れる決意を固めようとしていた。勝手に。自分が私の足かせになるからと言って聞かなかった。」
私の知らない”咲”も同じことを考えていたのだと知り、どこかでつながっていることを感じた。

「私がわがままで咲を手放せずそばにいてもらっているのだ。だから、私に遠慮をしたり、王として扱わないでほしい。心が痛む。」
「・・・私は本当にそばにいてもいいのでしょうか・・・」
ふとつぶやいた言葉に、鉄平は急に真剣な顔になり、布団の中で私の体に手を伸ばし抱き寄せた。
強く強く抱きしめる。

「二度というな。言ったであろう、咲という存在が私を強くする。もしも咲がいなければ今回の戦で命を落としていたはずだ。こんなにも自分の命にどん欲に戦えなかった。私を過大評価しないでほしい。私はそんなに強くもなく、王としての器もない。」
抱きしめられながら聞こえてくる言葉に私は首を振る。
「王は立派です。この国を支えている。他国の国民のことも考えて大切にされて、時に命を懸けて秩序を守ろうされています。私は心から尊敬しています。王を。」
「本当にやめてくれ。鉄と呼んでほしい。咲、お願いだ。」
鉄平に懇願されて私は「鉄」と名を呼ぶ。
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