脆姫は過去に生きる
まるで幼い子供のように私を抱きしめる鉄平。
背負うものの大きさに押しつぶされそうになる時、きっと鉄平は私を理由にして立ち上がってきたのだろう。でも、そうして想われているのはあくまで”咲”であって、私ではない。

それが・・・悲しく思う・・・

「婚姻の儀を早めようと思っている。」
「え?」
しばらくしていろいろな話をした後に、鉄平が本題を切りだすかのように話始めた。
まだ私たちは寝台の上で、抱きしめあい横になっている。

「菊姫のこともあり、国民も家臣たちも動揺していることだろう。よい報告で士気を高めたいという理由もある。」
「・・・でも」
「何より」
鉄平は体を離し、体を起こして私の頬に手を触れてまっすぐに私を見つめる。

「死ぬかもしれないと思った時、このまま死ぬのは嫌だと強く思った。咲を置いて逝きたくないと思った。結ばれぬまま命を終えてしまうことは、何より大きな悔いとして残ると思った。」
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