脆姫は過去に生きる
「この命が終わる瞬間まで待てなかった・・・一分でも一秒でも早く、鉄平の元へ行きたかった。だから・・・私は・・・」
言葉に詰まると鉄王が私の顔を覗き込みうなづいた。

ちゃんと聞く。
だから最後まで話してほしい。

そんな鉄王の心の声が聞こえてくる。

「海に・・・深い深い海に・・・進んでいった。」
自ら命を投げ出して鉄平の元へ行こうとした自分を恥じる。

もちろんつらかった。しんどかった。
それしかないと思った。

毎日苦しくて、切なくて、なのに涙が出なくて・・・ただただ苦しかった。
でも・・・この世界に来て、生きていることは当たり前のことではなくて、病気でもないのにたくさんの人が命を失うことが現実に起きる世界で、はじめて・・・私は後悔していたんだ。
< 107 / 251 >

この作品をシェア

pagetop