脆姫は過去に生きる
「文字が読めない?」
「はい」
私はすべてを打ち明けた日から鉄王に、すべてを正直に話すことにした。

「言葉は何を言っているか理解できるけど、あっ時々難しい言葉もあるけど。でも、文字だけはどうしても覚えようとしても覚えられない。」
私から見えるこの世界の文字は象形文字のような、ものの形をかたどっているであろうことはわかってもその形をどう頑張っても覚えることが難しい。まして、見本を御影さんに書いてもらっても、同じように書き写したつもりが、御影さんも富さんも、お世辞にも読めないと言われた。
「文字は書けない民はたくさんいる。姫の中にも文字が苦手な姫もいる。幼いころから文字を覚える環境になかったからな。咲は文字を読んで書くことができていた。とてもきれいな文字で、性格があらわれる文字。」
少し懐かしそうな顔をする鉄王。

”咲”を忘れていないのだろう。
時々鉄王は私といる時間に同じように懐かしそうな少し切なさの混じる表情をする。
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