脆姫は過去に生きる
謝りたくても、今私が謝っても意味のないことに思えて黙ってしまうと鉄王は柔らかく微笑みながら私の体を抱き寄せてくれた。

「体調はどうだ？最近、また痩せたような気がして心配をしている。」
「大丈夫。元気。今日は散歩もして、食事もいつもよりも多くとれたし。」
「しかし、気分がすぐれず寝台から出られない日もあるだろう」
鉄王は私の体調を医軍から報告を受けている。毎日必ず私の部屋に来てくれる鉄王。
王たる地位の人、かなり忙しいことは御影さんからも言われている。それでも時間を割いて会いに来てくれることが私にはうれしくも申し訳なくもあった。

「婚姻の儀はなるべく時間をかけないように、そなたに負担をかけないようにと考えているが、なかなか難しい。おそらく時間がかかってしまうと思う。」
「大丈夫。鉄に迷惑をかけないように、勤めます。」
「ははっ、敬語は使うなとあれほど言っているだろう。」
鉄王は私が咲菜であると知ってからも、敬語を使ったり改まる必要などないと言ってくれている。
むしろ、かしこまられると違和感を感じて調子が狂うらしい。
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