脆姫は過去に生きる
医軍の兵はこれから毎日私の体調を確認してくれることになった。
「姫様のお体はこの富が命を懸けてお守りいたします」
富さんはかなり張り切っている。
「もう誰にも脆姫などと呼ばせるものですか。誰よりも私は姫様のおそばで姫様の努力を見てきました。誰も知りえないような姫様のお力も魅力も知っています。お転婆でお体のことがなければどこへでも飛んで行ってしまうじゃじゃ馬姫ということも」
「富さん・・・」
興奮気味に医軍の兵が部屋を後にしてから身支度を整えてくれている富さんはふと私の頬に触れた。

鉄王は私が身支度を整えている間に、いろいろとやるべきことがあると部屋を出て行った。

「?」
急に両頬に富さんが触れて私をじっと見ている状況に、私は首をかしげる。

富さんの瞳にはみるみるうちに涙が満ちていった。

「亡くなった姫のお母さまからのお付き合いです。病弱に産んでしまったことを心から悔いていました。ご自分の何かがいけなかったとかも知れないと責める毎日を、私はそばで見ていました。」
私はこの時代の両親のことを歴史上の人物のような感覚でしか知らない。その知識は御影さんから教えられた程度だ。
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