脆姫は過去に生きる
『咲!』
切羽詰まったその声に私は目を覚ます。

視線のすぐ先には鉄王の心配そうな顔。

「咲、大丈夫か?」
私の髪をかき上げて、私の表情をうかがう。

「大丈夫か?どこか痛むか?」
心配する鉄王に私は両手を伸ばす。

すぐに私の体を抱きしめてくれる鉄王。
そのたくましい体にいつもなら安心できる。
いつだって手を伸ばせば私を抱きしめたり、その手をつなぎ、強くたくましい腕で支えてくれる。
守ってくれる安心感がある。

でも今は違う。
どこか・・・違う場所に感じる。
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