脆姫は過去に生きる
首を横に振ると鉄王はふっと笑い、私の髪を撫でながら私の体を包み込むように抱きしめなおす。
「よかった。」
「・・・」
「無事に産まれてくれればなんだってする。何に変えても咲とこの子を守る。大切なものがもう一つ増えたんだ。私はもっと強くなる。強くなれる。」
鉄王の言葉に涙が溢れて止まらない。

幸せな温かな気持ちと、咲さんへの申し訳なさで心が真っ二つに離れてしまう。

大きく深呼吸をして、涙をとめようとする私に鉄王は「ここだけにしてほしい」とささやく。

「涙を流すのも、不安を吐露するのも、喜びも悲しみも、苦しみも痛みも。すべて吐き出すのはここであってほしい。私の胸の中だけに。」

鉄王の想いを一身に受けて、私は頷きながらあふれる涙をこらえきれなくなった。
< 136 / 251 >

この作品をシェア

pagetop