脆姫は過去に生きる
「姫たちのことだが」
鉄王は言い出しにくそうに話をきりだす。
「・・・」
「菊姫のことがあってからよくない動きが増している。咲の懐妊をすべての姫が喜んでいるわけではない。むしろ危険も伴う。この王宮にいるものは私が幼いころから知っている信頼できるものばかりだが、この王宮を一歩出れば私が王に就いたことに反対しているものも、紅姫を敵対視している者も大勢いる。今後は今まで以上に気を付けてほしい。」
確かに、鉄王が王としてこの国を守っていても、この国のさらなる繁栄を求めている人や、鉄王の守り中心の国の守り方に反対している人もたくさんいる。
御影さんは鉄王は領土を広げることよりも友好的に国を繁栄させ、国を豊かにし、国民の生活の質を向上させることを第一に考えていると教えてくれたことがある。だからこそ、豊かな環境で育った人にはそれが理解できず、領土を広げることやさらに国益を挙げて国を強靭にしたいと考えている人も多いらしい。
どちらの考えも育った環境を考えれば理解ができる。

すべての人を納得させて、皆仲良く幸せになんていうのはきれいごとだと私は十分理解しているつもりだ。
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