脆姫は過去に生きる
「言っただろう。涙を流すのはこの場所だけだと。」
「・・はい」
私はこの人と一緒に生きていくことを心に誓い、大きく深呼吸をしてから鉄王の胸から体を離した。

「行きましょう」
「そうしよう。咲。」
私たちは腕を組み、前に進んで歩き始めた。




これから始まる大きな悲しみを前に、その予感すらせずに・・・



ふと隣を見ると私に優しい視線を返してくれる鉄王。

私はいつの日からか鉄王に恋に落ちていた。
鉄平に似ているからではない。

今隣で優しく微笑む鉄王を愛しているのだと、わかっているのに、気づかないふりをしていた。


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