脆姫は過去に生きる
「婚姻の儀を終えて、紅姫は私の妃となった。今後は紅妃と呼ぶように。それから、紅妃は今懐妊している。」
王の言葉にすでに知っていたものはため息を、知らなかった人からはざわめきが溢れる。

「この国の母となり、紅妃はこの国を背負う次期王を宿している。」
皆が王の声に一気に鎮まる。

「私はもう誰の血も流してほしくはない。命を失ってほしくない。そう思っている。命に順位などない。誰の命も私には大切だ。」
鉄王の考えは、今までの王とは違うと御影さんが言っていた言葉を思いだす。

「私はこれからも無駄な血は流させない。国を守るために、国民を守るために、私の信じる国政を進める。利益も大切だ。飢えないことも大切だ。しかし、贅沢はいらない。無駄はいらない。必要以上を欲張らずに生きることで、無駄な戦いや争いは避けようと思っている。この想いは王になった日から変わらん。」
鉄王は隣に立っている私の手をギュッと握った。

熱い熱い手にその想いの強さを感じる。
< 159 / 251 >

この作品をシェア

pagetop