脆姫は過去に生きる
「何度も戦場で命が簡単に消えてしまうのを見た。」

鉄王の背負っているものは大きい。
私もこれから一緒に背負っていくのだと決意を固めながら話を聞く。

鉄王の手を強く握り返しながら。

「もう誰かの大切な人の命が消えていくのを見たくない。」
鉄王の想いは皆に伝わっているだろうか。

「先日菊姫が亡くなった。」
鉄王が婚姻の儀を伸ばしていたのには、きっと菊姫の喪に服すという意味もあったと思う。
「自国の争いで流れる血に、責任を感じたのだろう。私は菊姫の命も、尊いと思っている。誰の命も大切だ。同じように大切だ。」
この場で鉄王は話すことをあらかじめ決めていたのだろう。

「この国に暮らすものの命は誰の命も尊いと思っている。」
鉄王はそう話しながらほかの姫たちが並ぶ方を見た。
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