脆姫は過去に生きる
「直接会わずとも、話をせずとも、この国に暮らすものは私にとっては皆大切で守りたいものだ。」
王になってからも鉄王はほかの姫たちの部屋には行ったことがないという話を思い出す。

「たとえ違う国に生まれた命でも、私にとっては大切だ。」
姫たちに向けている言葉はもしかしたら私を守るために言っているのかもしれないと思いながら話を聞く。

「この想いは変わらないことを皆に言っておきたかった。」
この時代に生きる人たちにとっては、鉄王の考えは新しすぎて受け入れがたいものなのかもしれない。
でも私は一人の人間として。鉄王の考えが素晴らしいと思っている。
「これからも、私は全力で皆を守る。だから皆もこの国のためにどうか力を貸してほしい。」
王が国民に頼みごとをするなんて、この国の人にとっては異例なのだろう。皆に驚きの表情が広がっていく。

「私は紅妃と共にこの国を守り命ある限り、この国のために尽くすと改めて今ここに誓う。」
強く私の手を握り返す鉄王に私は視線を送る。
< 161 / 251 >

この作品をシェア

pagetop