脆姫は過去に生きる
鷹姫は凛々しいほどのまっすぐなまなざしを鉄王に向けている。

「何か誤解がおありのようですが、私はあの日紅姫をお助けしようと」
「妃だ。もう紅姫と呼ぶことは私が許さん。」
鷹姫の言葉を途中で止める鉄王。まだ厳しい表情のままだ。
「私は鷹姫の国との友好関係を壊すことは考えていない。鷹姫がこの国にいる限り私はそなたを守る。皆の前で話したことに嘘はない。」
鷹姫はふっと笑った。

「妃に何かあれば、私はきっと今の決意も想いも変わり人格も考えも変わるだろう。」
これは鉄王からの忠告だと鷹姫は十分察している。

私はその場にいたたまれず、思わず富さんの方を見た。

富さんも鋭いまなざしで鷹姫を見ている。

富さんも知っているのだ。鷹姫が私にあの日したことを。
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