脆姫は過去に生きる
変な質問をすると不思議がりながらも鉄平は私に話してくれた。

咲とは私が生まれた時の名前らしい。
位が変わると名前も変わるらしく、今は紅姫と呼ばれているらしい。
鉄平は私と二人の時だけ生まれた時の『咲』という名前で呼んでいると教えてくれた。
同じように私も王である鉄平を、生まれた時の名前の『鉄』と呼んでいたらしい。


「このまま私の妃になれば紅妃と呼ばれる。」
「妃?」
「何を言ってるんだ。おかしな姫だな。来年にはもう妃になることが決まっているだろう。」
「・・・そうなの・・・?」
「そのために今はいろいろと準備をしているのだろう。まぁ、いろいろと困難はあるがな。」
「・・そう・・・」
「もう少しの辛抱だ。もう少しで説得が終わる。軍の上位の物たちも頷かせて見せる。だから、安静にして、体を大切にして待ってるんだぞ?」
「・・・はい・・・」
鉄平はそう言って私の髪をかき上げながら愛おしそうに目を細めて私を見る。
その瞳は変わらない。鉄平そのものだ。
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